弁護士視点のFintech×不動産―規制とイノベーション、天秤はどちらに?

#RealestateTech 3/5

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2018年11月に開催された第2回「LivingTech カンファレンス」。『POST2020』をテーマに掲げ、2020年から5年後の社会を考えるトークセッションが展開されました。人口減少、少子高齢化、過剰供給……。社会課題について交わされた13セッションの中から、「不動産テックの現在地と未来」と題して行われたセッション(全5回)の3回目をお届けします。

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登壇者情報

  • 赤木 正幸氏:リマールエステート 代表取締役社長
  • 落合 孝文氏:一般社団法人不動産テック協会理事 渥美坂井法律事務所・外国法共同事業パートナー
  • 川戸 温志氏:NTTデータ経営研究所 ビジネストランスフォーメーションユニットシニアマネージャー
  • 森井 啓充氏:オープンハウス Chief Innovation Officer
  • 池本 洋一氏:リクルート住まいカンパニー SUUMO編集長 /モデレータ

Fintechは、金融サービスの枠を飛び越えた

池本 では続いて落合さんから今度Fintechですね。正直これだけパワポ用意されてて短時間で4人の話が聴けるってお得だなと思って。もっと広い部屋でもいいんじゃね?と思ってるんですけど、まあいきましょう。

落合孝文氏(以下、落合) じゃあすいません、私からお話をさせていただきます。

落合 孝文:一般社団法人不動産テック協会 理事, 渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 パートナー。1980年宮城県生まれ。2004年慶應義塾大学理工学部数理科学課卒業後、同大学院理工学研究科在学中に旧司法試験合格。同大学院中退後、2006年森・濱田松本法律事務所入所。同事務所東京オフィス及び北京オフィスに勤務し、国内外の企業紛争、事業再生、知的財産、投資等の分野で業務を行い、裁判所に選任される財産管理人等として、不動産取引に多く携わる。2015年より現事務所に参画。その後、一般社団法人Fintech協会分科会事務局長、一般社団法人電子決済等代行事業者協会理事、日本医療ベンチャー協会理事等として、規制領域におけるイノベーションを志向する事業者の団体の組成、活動に関与する。総務省AIネットワーク社会推進会議影響評価分科会委員、経済産業省ブロックチェーン法制度検討会委員、一般社団法人全国銀行協会オープンAPI推進研究会メンバー、一般財団法人日本情報経済社会推進協会個人情報保護指針改定に伴うマルチステークホルダープロセス委員等を歴任する。

私弁護士でご紹介いただいたんですけど、不動産テック業界の理事で入らせていただいておりまして、その他にもともとFintech協会の分科会の事務局長をやっております。

これは政策渉外周りを全般的に見るということで、例えばいろいろな省庁、全銀協、貸金業協会、そういうところとお話をさせていただいております。

Fintechでそういう風に業界の形成をやってきたところがあるので、不動産テック協会でもそのノウハウを生かしたいと思っております。今起こっていること、テクノロジーによる変化は、別にFintechと不動産テックが独立に起こっているわけではなく、第四次産業革命と言ったりするようなIT技術の進化も背景にして、データを使っていこうといった動きが各業界でそれぞれ出てきている面があると思っております。このため、Fintechでの活動の中に不動産テックで利用できることもあると思っております。

先ほどは多産多死のような話がありましたが、全てがうまくいくことはないので、イノベーションを起こすために実験をしたりするのが重要と思っています。

例えば、規制にあたりそうなところも実験できるようにしよう、というのがRegulatory Sandbox(編注:革新的な新事業を育成する際に、現行法の規制との関係での整理を行い実証実験の実施を認める政府の策)です。私のほうでは、この制度の評価委員会の委員であったり、情報銀行に関する検討会のメンバーに入っており、役所の検討に関わっていることも活かして、単純に法令の適用の話だけではなく、政策的な話も最後付け加えられればと思っています。

Fintechって何なんでしょうということで、ファイナンスとテクノロジーでですね。これは新しいことなのかというと、実は金融業界は昔からテクノロジーを使っていましたというのが正しい面があります。

というのは、皆さんATM使われたことがあると思いますが、昭和の時代からATM使われていました。これはテクノロジーを使っていたということになります。今初めてテクノロジーを使うわけではないというのが金融業界の位置づけと思っております。

だとすると、ここで一体何が変わってきたのかですが、サービスの作り方だったり発想がユーザー起点に変わってきています。また今の新しいテクノロジーを使っていくところがあります。これらの部分を指して特にFintechと言っていると理解していただくといいです。

従来からの金融サービスは、非常に安定的であり、堅牢なシステムです。もう少しユーザーの行動様式に合ったサービスを提供するために、顧客目線で見た時にどういうサービスがあったほうがより嬉しいのかということに合わせていくことを、テクノロジーを使ってできるようにしていくという、ある意味デザイン思考にも近い話の取り組みになってきています。

Fintechという文脈では、サービスの中で、最終的には金融サービスを受けたと思わない形で金融サービスを使っていける、そういうUXを実現していけるようにしていくことは一つの考え方です。

Fintechのサービスは、もしかすると金融市場自体をより拡大していけるのではないかということもあります。金融包摂といわれるような、特に途上国で言われることが多いことですが、今まで金融サービスを受けられなかった、Unbankedと言われる銀行口座も持てなかった人に対してもサービスができるようにしていくという視点もあると思います。

従来は、例えば銀行の機能は今までは預金・決済・融資が全部同じ事業者が提供できることが当然の業態の中に組み込まれていました。しかし、これが別に必ずしも全部セットじゃなくてもよく、別々にユーザーにとって使いやすい形で組み合わせていくこともFintechでは起こっていくことかと思います。

規制の観点からは、貸金業、資金移動業、金融商品取引業のような従来から存在するライセンスを取得するFintech事業者もいます。例えば、ロボアドバイザーは証券会社と同じライセンスを取ってビジネスをしている会社が多あります。他方で、銀行のライセンスは持っていないが、電子決済等代行業ということで、銀行APIの利用を通じて銀行の機能を使えるようにしていく事業者もいます。

銀行の決済システムを別の会社のユーザーインターフェースから指示できるようにするというのが銀行APIですが、マネーフォワードfreeeなどが代表的な会社となります。

あとはテクノロジーをいろいろな金融機関に提供するいわゆるベンダー的な事業者ももいます。

不動産テック加速のドライバーは、取引データの活用にある

非常に重要な視点としてデータの利活用があります。特に日本のFintechの中で大きくなってきている部分としては、マネーフォワードだったりfreeeだったりあとzaimMoneytree。こういった会社はそれぞれユーザーは100万単位でいると推定されております。

データを利活用できる仕組み、これは単純にある事業者が使いたいというだけではなくて、本人、金融機関ほかデータを渡してくれる人にメリットがある形が大事だと思います。

池本 そろそろまた巻きモードでお願いします。この役回り嫌ですね、ちょっと(笑)。

落合 はい、巻きモードですね(笑)。

ちなみにFintechとデータの利活用とキャッシュレスも繋がっています。昔は貨幣は貝殻だったころもあったと思いますが、貝殻が紙幣という紙になってということが起こってきました。この時点でも、原始的な物々交換からはかなり変わってきていました。これをさらに電子決済の割合を高めていくことが想定されていますが、そうすると決済のデータを使えるようになります。

この貨幣の歴史の中でも紙は比較的最近出てきたもので、ここに絶対にこだわらないといけないというのは、本当に必要なのかというのが今の流れです。

政策のところもちょっとだけ触れますけど、やっぱり全般的にこういったイノベーションを起こしていこうというのが政府の戦略になってます。

不動産の中でも不動産取引サービスのデジタル化について一定の電子契約の普及ですとか、登記手続きの電子化とか、こういうのを推進していこうとなってます。

具体的な規制改革も大事で、Fintechもこうした規制改革の流れと上手く乗ろうとしております。こういったところもぜひ見ながら業界の動向を分析してもらえたらいいです。すいません、長くなりましたが以上です。

池本 いや、ちょっと巻きが早かったですね。いや、素晴らしいですけど。ありがとうございます。1回ずつ拍手しましょうかね。

(会場拍手)

池本 こういったFintech×不動産領域の今後というテーマも、もしくは弁護士でもいらっしゃるので、さっき言ってたクローリングってグレーだよねという話でクローリングについてもあるし、このへんの弁護士的部分を含めてご質問がある方は落合さんのところに来てください。

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