なぜ仕事で人が不幸になるのか?―多くの人が自分の“いま”を分かっていない問題

#WorkAsLife 5/6

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2018年11月に開催された第2回「LivingTech カンファレンス」。『POST2020』をテーマに掲げ、2020年から5年後の社会を考えるトークセッションが展開されました。人口減少、少子高齢化、過剰供給……。社会課題について交わされた13セッションの中から、「Work As Life」と題して行われたセッション(全6回)の5回目をお届けします。

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登壇者情報

  • 山口 周:コーン・フェリー・ヘイグループ パートナー , 一橋大学 経営管理研究科非常勤講師
  • 柳澤 大輔:面白法人カヤック 代表取締役CEO
  • 林 宏昌:リデザインワーク 代表取締役社長
  • 石川 善樹:Campus for H 共同創業者
  • 武井 浩三:ダイヤモンドメディア 代表取締役 /モデレータ

自分のことが分かっていない、そもそもそれに気づけていない

山口 僕ね、仕事で不幸になる人がすごく多いと思っていて。

僕はサラリーマンなので、うちの会社で組織調査とか売り歩いているんですけど、日本で仕事にやりがいを感じている人ってだいたい一割しかいないんです。

僕がいた古巣も、ものすごくメンタル病んじゃう人が多くて、仕事で不幸になる人がすごく多い。

プロセスを見ていくと、ある日、仕事を通じて不幸になっている自分を突然発見するんです。

徐々に不幸になって悪化していって、もうダメだって突然倒れるんじゃなくて、ある日突然、ベッドから起きられない自分を発見するんです。みんな。

テクノロジーということで言うと、いろいろ外に向かうというのももちろんあるし、僕はお金以外の組織とかコミュニティの状態を測るというのはすごくキーだと思うんですけど、もう一つ測らないといけないのが、自分がどういう状態なのかが分かると結構面白いと思っているんです。

これが一週間続くと、あなたベッドから起きられなくなる確率が統計的に8割ですとか。もしかしたら(石川)善樹君なんかそこ専門だと思うんですけど、どの仕事をやっているときに自分が上がっていたりだとか、自分で気づいていないんですよ、ほとんどの人。

自分が面白いと思っている仕事とか、あることを聞いたときにすごく面白いと思っているのを、ここにいる人たちはその感度がすごく鋭いので、自分の面白いと思っている方向にどんどんクンクンクンクンって犬みたいに行くんですけど。そこって結構微妙な感覚なので、アンテナを使わないでいるとどんどん錆びちゃうんです。

例えば身体感覚とか、多少呼気が上がるとか、動悸が上がるとか、あるいはストレスを感じているとかが分かってくると、自分がどういうときに上がって、どういうときにすごくまずい状態になって、かつこれ以上いくとやばくなるみたいなことを教えてくれるテクノロジーが出てくると、結構面白いと思ったんです。

個人の感情や精神状態の“可視化”が、多様な働き方を可能に

山口 それって本当、ノーバート・ウィーナーが言ったサイバネティックスもそうだけど、フィードバックはすごく重要なポイントで、今のワーカーはフィードバックが全然機能していないんです。何をやっているときが楽しくて、何をやっている時がストレスなのか。

ストレスの感度が鈍っちゃっているので、システム崩壊をいきなり起こすんです。フィードバックループは働いているのに信号が遮断されているので。

だからそれを別のシステムで取ってあげて、ベッドで羽交い締めになって起きられなくなっちゃうとか、今日は会社に行くなみたいな、Suicaが使えなくなるとか、そういうのになると結構面白いかなって思いますね。

ストレス状態になると電車が止まっちゃうとか、車が会社の方向に行こうとすると勝手に海のほうに行っちゃうとか。そういうのがあったら、新しいテクノロジーかなと思ったんです。

あとは測って、一人ひとりで個別最適なことがどんどん進んでいくといいですね。

だから企業側も本当はさっきの、働いていい人といけない人みたいなことがあって、僕もさっき自分で選んで働きたい人は働けばいいという表現をしたんですけど、まさに僕もその立場で悩むのは、自分がどれぐらい働いたらいきなり倒れてしまうのかが分からないことが一番のリスクなんです。

そうすると結局、これ以上やるとダメだなというのを自分で制御してくれていれば企業側も別に問題ないんだけど、そこがいきなり倒れちゃうので。全員一律でこの時間しか働けないとか、全員一律でこういう制度でやるんだとかってなる。

本当はあなたはそろそろ危ないから、ここ一週間は早く帰りなさいというのが、個別最適でできるようになっていく社会のほうが本当はいい。

今めっちゃ元気なのに、あちらの元気がない人のために私も帰らないといけないとか、あるいは自分は今日は家でもできるのに、サボる人がいるから私もその人にあわせて会社に行かないといけないとか。

一律にならざるを得ない組織の限界を、一人ひとりの個別最適で測るテクノロジーが出てくると、そこが結構進むと思います。

石川 測定とフィードバックですね、山口さんが仰った。

柳澤 タケちゃん全然喋ってないね。

武井 いやあ、面白すぎて(笑)。

良い悪いではなく、合うか合わないか

山口 場所の好き嫌いも、感じる力の強い人と弱い人がいる感じが僕はしていて。

最終的には僕はすごく不便なんだけれど、葉山の海岸沿いに住んでいて。(不便なんだけど)明らかにそこにいるときは。

以前、世田谷のすごくいいところに住んでいたんですけど、何かおかしいという感じが拭えなかったんです。

柳澤 相性もありますね。

山口 相性もある。だからこれは良い悪いの問題でなく、まさにその一つのものさしじゃなくて、その人に合うか合わないかです。

あとクライアントで、なんかこのオフィスに行くと体調が悪くなるオフィスがあるんです。

なるべくそこは断るようにしちゃっていますが、ただそこもやっぱり生まれつきの感度もありますし、行くとたぶん体温が下がったり、心拍が上がったり、汗が出たり、微妙な反応をずっとやっていると、どうもここは行かないほうがいいらしいみたいなフィードバックが出ますが。どうですか、そのあたりは?

柳澤 ちょっと思い出した話があるんですけど、うちのグループ会社に鎌倉R不動産という会社があるんですよ。

そこの社長が、ある物件を紹介されたんです。地元のオーナーの方に、この物件をって。

そしていろいろ話をしていたら最後に、おたくには波動が合わないから頼まないって言われたんですよ。

それを聞いたときに、この断り方は意外に傷つかないなって。それはもうどうしようもないなと思って、そうかって思いました(笑)。

石川 採用のお断りもね。弊社とは波動が合わないので。波動の関係でダメでしたって(笑)。

柳澤 どうにもならない。

山口 それは良いことを聞きました。メールからも感じますよね。パッといただいて、どうもなんかちょっとこれを引き受けると自分の運気が逃げる。

柳澤 そう言うと、相手は傷ついちゃうけど(笑)。

山口 いただいた文面から感じる波動がちょっと弊社とは合わないようですので残念ですが、とか言ってね。

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