1/3 スケール三田式 3 型改 1 製作記

12部シリーズの第12部

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If you prefer you can read the English translation of this article, which was provided by the author. この記事に進む前に、このシリーズの 第11部 を読むことをお勧めします。

製作その55 運搬治具

早速機体を分解して車に載せて運搬する治具を製作しました。

胴体運搬治具

胴体は尾翼を外しても全長が約2,420mm程度あります。従って私の車(スバルフォレスター)の荷物室には納まりきれません。比較的細い尾部を前にして、運転席と助手席の間から後胴を突き出す形で搭載します。その状態で1輪式の機体が動かないように車載する治具を作りました。これが出来上がった車載治具です。

画像282 胴体運搬治具
画像282–1 車に積んだ胴体

治具の下面はキンクした2枚の板でできています。これは車の後席を倒した状態で、荷物室の床面と後席背面が完全にフラットでは無く若干の角度を有するので、それに合わせた結果です。治具下面が車側の床に一致して重量を全面で受けることができます。

外翼運搬治具

外翼は約1,670mmの長さがあります。当初これは後席を畳めば積めると考えていましたが、ハッチバックドアが意外に厚く若干当たってしまうことが判明しました。翼端を外せば問題なく積めますが、平積みすると大面積を占有して他に荷物を積むことができません。そこで前縁を下にして胴体の両脇に立てて運ぶことにしました。画像283がその為に作った治具です。外翼を立てて胴体を挟みます。

画像283 外翼運搬治具

中央翼運搬治具

中央翼は分解すると約1,000mmの長さになります。これも翼弦長が400mmありますから立てて運ぶ必要があります。それで作った治具が画像284です。

画像284 中央翼運搬治具

全機の車への搭載チェック

これで主要コンポーネントの車載治具が出来上がったので車に積んでチェックします(画像285)。

画像285 車載チェック

水平尾翼は中央翼の間に納まりました。垂直尾翼も中央翼の後に置けます。左側を空けているのは未だ大物のドーリーがあるからです。ドーリーと工具、送信機等をこのスペースに収まるようにしなければなりません。ドーリーはどうやら組み立て式にしないと納まりきれそうにありません。気になる運転席付近ですが、肩の位置に後胴が突き出てきますが、それほど邪魔にはならないことが確認できました。

製作その56 ドーリー

運搬治具の製作に続いて地上発進用のドーリーを製作しました。

ドーリーの図面

ドーリーには機体の支え方の違いで大きく分けて2種類の型があります。一つは胴体の下部を支える方式で、もう一つは主翼を支える方式です。

前者は細い胴体を下から受ける台車となるために比較的コンパクトにできますが、左右方向のトレッドが狭いために安定性に欠けます。私の1/5三田式はこの方式のドーリーを採用しています。この方式は胴体下部に開けた穴にドーリーから突き出したピンを挿しこんでドーリーを牽引します。1/5三田式は胴体下部に板が貼ってあるので穴を開けることができました。

後者は左右の主翼を下から支える方式です。胴体を挟んで主翼を支えるのでトレッドが広くなり安定性が増しますが、どうしても大型になってしまいます。主翼の前縁をドーリーで押さえることでドーリーを牽引します。今回の1/3三田式は実機同様胴体下部も羽布貼りの為、穴を開けられないのでこの方式を採用しました。

図面66 ドーリーの図面

製作したドーリー

図面に基づいて主に5.5㎜シナベニアを切出して製作したドーリーです。

画像286 完成したドーリー 左=全景 中=前側 右=後側

左右を繋ぐ板は前後同じような作りになっています。切欠きは胴体下部との接触を避ける為です。6本のネジで留めた前後の板のネジを外すことで、ドーリーは4枚の板になり運搬が楽になります。しかしそれにしても随分大きなものになってしまいました。

機体の試し据え付け

早速機体を据え付けてみました。この状態でプロペラ軸を持って前側に引っ張ってみました。地面には大分草が伸びていますが、それほど大きな力を加えなくても車輪が転がることが確認できました。上手く滑走できそうです。

画像287 ドーリーに載せた機体

地上試験

いよいよ初飛行に向けて最終確認の地上試験です。クラブの飛行場に搬送して現地で組み立て/分解を行うと共に、各種地上試験を実施して大きな問題の無いことを確認します。

現地への運搬及び現地での組み立て

運搬治具を用いて車に載せて自宅から約30分の位置にあるクラブの飛行場に運びました。車での運搬も特に問題なくスムーズに運べることが確認できました。

早速現地でドーリーと機体を組み立てました。仲間に手伝って貰って組み立て中の様子です。

画像288 飛行場での組立

現地組み立ては初めてなので手順を若干間違えたり、ワッシャーの入れ忘れ、エレベータリンケージの接続忘れ、中央翼取付ボルトの合わせ不良、ラダーリンケージ用ナットの紛失等の細かなミスが発生しました。そのような訳で約1時間掛って全ての組み立てを完了しました。次回以降はもう少し短時間で組み立てられると思います。組立完了した機体をドーリーに載せて記念撮影です(画像289)。

画像289 組立完了後の記念撮影

地上試験

まず電波受信状態の確認です。送信機の出力レベルをLowにし、数十メートル離れて操舵しながら機体を360度回転してみて異常が無いことを確認しました。電波を通さないカーボンロッドのトラス構造なので受信性能に一抹の不安を感じていたのですが、これで一安心です。

次はプロペラテストです。動力用LiPoを繋いで仲間に機体を抱えて貰いスロットルを一杯に上げました。プロペラの異常な振れや振動も無く、推力もOKです。

画像290 プロペラテスト

その次はドーリーに乗せた走行テストです。スロットルを徐々に上げると地面の草が大分伸びていますが動き出しました。スロットルを煽ると素直に追随してドーリーが走り出します。

画像291 走行テスト

変に片側に流れることも無く概ね真っ直ぐ進むことが確認できました。ドーリーの車輪が機体の大きさに対して若干小さすぎたかな?そのために機速が上がらないかも知れないと少し不安に思っていましたが、問題無さそうです。但し機体の姿勢角が若干ノーズダウンです。その為、プロペラ先端が伸びた草の葉に当たります。ドーリーの設計時点では約2度の頭上げになるように配慮したのですが、実際は頭下げです。そのため、写真ではエレベータをアップに引いているのが判ります。

調べてみるとドーリーの翼受けに貼った厚いスポンジが悪さをしていました。主翼受けは主翼下面に接するようにカーブさせて作りましたが、その上に主翼保護の為に20㎜厚程度のスポンジを貼りました。主翼下面に均一な圧力が掛ればスポンジも一様に圧縮されて機体姿勢角も設計通りになるのですが、重心位置の関係で前縁側のスポンジが多めに縮んでしまうことからこのような結果が生じてしまったのです。前縁側のスポンジの下にスペーサーを入れて修正することにしましょう。

クラブのベテランパイロット佐藤さんに送信機を渡して地上滑走の感覚を確認して貰いましたが、素直で今にも離陸してしまいそうです。そのまま離陸したい衝動に駆られましたがその日は風向きが逆なので、初飛行は後日のお楽しみということにして地上試験を終了しました。

ドーリーと機体の分解及び車への搬入は約30分で終了することも判りました。

画像292 地上試験を終えて車に搬入した機体

初飛行成功!

2019年9月19日に初飛行を敢行し、ほぼ成功裏に終えることが出来ました。

初飛行の状況

変わりやすい秋空で天気が目まぐるしく変化していましたが、当日は晴天で風も穏やかなので初飛行を敢行することにしました。操縦は佐藤さんにお願いし、写真撮影は現役時代からの会社仲間である白鳥さんにお願いしました。又、「ラジコン技術」誌の山本記者が取材に来られました。

発進準備完了

画像293が組立を終えて各舵のチェックも完了し、発進を待つ状態です。

画像293 発進準備を終えた機体

Take Off

送信機(FUTABA 10J)の設定は今のところグライダーモードでは無く、飛行機モードにしてあります。従ってスロットル調整が可能で推力の微調整ができます。スロットルを徐々に上げるとドーリーが走り出しました。数メートルも走ると機体が浮いてドーリーから離れました。

画像294 Take off

実はこの瞬間に危機一髪の問題が発生しましたがそれは後程説明します。ベテランパイロットの佐藤さんの素早い回復操作で何とか離陸しました。

上昇

プロペラをフル回転して秋空に力強く上昇していきます。

画像295 上昇

上空飛行

プロペラを折りたたんで上空飛行に移りました。

画像296 上空飛行

かなりゆっくり飛んでいるように見えます。機体が大きいのでそのように見えるのか、翼面荷重が小さいので実際に速度が遅いのか未だ良く判断できません。但しパイロットの佐藤さん曰く、もう少し重く且つ前重心の方が走りが良いかも知れないとのこと。この辺はもう少し飛ばし込んでから判断したいところです。雲と戯れているところを一枚。これぞグライダーです。

画像297 雲と戯れる三田式3型改1

また、若干右ロール気味とのこと。これは右主翼が左主翼より30g重くできてしまったことから予想範囲内のことです。次回飛行までに左主翼内に錘を積んでバランスを取ることにしましょう。

Landing

10分程度飛ばして飛行特性を掴んだ後で着陸に移りました。その前にスポイラーを出してその効きを確かめました。通常は送信機をグライダーモードに設定して、スポイラー操作をスロットルスティックに割り当てその出方を連続的に変えられるようにしますが、今回は飛行機モードで飛ばしているのでスポイラーはトグルスイッチに割り当ててあり、2段階の調節しかできません。スポイラーを出すと約45度の降下角で急激に高度を落としてくれ、降下角調整には充分効くことが確認できました。

スポイラーを出して地上近くまで降りてきました。

画像298 着陸進入

接地直前のショットです。

画像299 最終フレアー

最終フレアーに入ってスポイラーの出っ張りが少ないために減速効果の少ないことが判明しました。しかしベテランパイロットの佐藤さん、ナイスランディングで無事に着陸できました。ここまでの飛行で動力用LiPo(8セル 5,100 mmAh)の消費は30%程度です。十分余裕があることが判りました。

以上で無事初飛行を終えることが出来ました。飛行特性も全く問題ありません。小回りしても翼端失速の兆候も無く安心して飛ばせることが判りました。惜しむらくはスポイラーの減速効果不足だけです。大変悔しいことですが中央翼を作り変えない限り修正できません。

離陸直後に発生した危機一髪

離陸直後、機体がドーリーから離れる瞬間に水平尾翼がドーリーを引っ掛けてドーリーが転倒したのです。機体も大きく姿勢を崩しました。この瞬間を白鳥さんが撮影して下さった動画のコマ送りから再現したのが画像300です。

画像300-1 離陸のためにピッチアップ
画像300-2 水平尾翼がドーリーに引っ掛かり機首を下げました。
画像300-3 そのままドーリーを引き倒し機体は機首をますます下げます。
画像300–4 緊急エレベータ操作で地面すれすれで持ち直します。ドーリーはひっくり返りました。
画像300-5 テールスキッドが地面に接しているようにも見えます。
画像300-6 大きく機首を上げます。
画像300-7 そのまま急上昇に移りました。

離陸のためにピッチアップしたところ右水平尾翼がドーリーに引っ掛かりました。その為機体は大きく頭を下げて地面に激突寸前でした。プロペラが地面を叩く直前、パイロット佐藤さんの咄嗟の操作で回復して急上昇に移りました。重たいドーリーが後方でひっくり返っています。テールスキッドは地面に着いているように見えます。急上昇中も失速を起こさず、正に危機一髪で初飛行大破の惨事を逃れることができました。動力システムの再考で不測の事態に備え一回り大きなモーターを搭載したご利益を早速受けることが出来ました。

実は本件についてはドーリーが出来た時に、今回写真撮影をしてくださった白鳥さんからその危険性を指摘されていました。私はこれだけ大きな機体では機体のピッチ姿勢変化はそんなに速く無いであろうから、機体が浮いてドーリーを離れる迄の短時間での機体姿勢変化は無視できるとして、接触の可能性は少ないと判断していました。しかし現実に引っ掛けてしまった訳ですから私の判断ミスです。

小型ドーリーの製作

対策としてドーリーが水平尾翼と接触する恐れの無い小型ドーリーに切り替えることにしました。

製作した小型ドーリー

新たに製作したドーリーは胴体を下から支える形式のものです。形状は至ってシンプルで4角形の枠に前回のドーリーで使用した車輪を取り付けたものです。

画像301 小型ドーリー用台車

この上に機体を車に載せて飛行場に運搬する治具を乗せるとドーリーとして完成です。機体を画像302のように載せます。

画像302 小型ドーリーに載せた機体

機体運搬治具には主車輪の前に制止板を立ててあります。

画像303 制止板

これに車輪が当たってドーリーを牽引する訳です。主翼に揚力が発生すると胴体が浮き上がり車輪が制止板を離れる、という仕組みです。2019年9月末からこの小型ドーリーで何度も離陸を試みましたが全く問題なく安心して離陸できることを確認しました。

飛行動画

本機が優雅に飛行する様子をクラブ仲間の白鳥さん(ハンドルネームCygnus Tori)がドローンで空中撮影して下さいました。これは第2回目の飛行で、完成した小型ドーリーを使って離陸しました。

これで2017年末調査開始/2018年3月製作開始した1/3スケール三田式3型改1のすべての作業が完了しました。1年10か月程の間存分に楽しむことが出来ました

製作を通して感じたこと

翼幅5.3m超、重量約10Kgの大型スケール機を初めて製作して感じたことは以下のことです。

  1. ボール盤や電動糸鋸一つなく、ハンドドリルとオルファのカッターでも機体は作れます。道具が無いから作れない、と言うことは全く無いと改めて確認できました。
  2. 製作に当たっては図面作成が一番大切で全労力の8〜9割が製図作業という感じでした。どのような材料を用いて、どのように部品を組み合わせるかを頭の中で考えて、それを詳細図面で表現することが払わねばならない努力の大半です。詳細図面が描ければ後はその通りに部品を切り出して組み立てるだけです。詳細な図面が描けない場合は作り方が頭の中で纏まっていない証拠で、いくら材料を目の前にしても工作ができません。
  3. 治具を惜しまないことが上手く作るコツだと改めて感じました。一つ一つの部品を精度良く作り、それを精度良く組み立てるには治具が大変有効です。精度良くできていれば組立も楽で手直しが必要ありません。今回の製作で手直しを要求された大半は治具を省略した部分でした。

以上、製作過程で考え検討したことと共に、発生した不具合や失敗を全てさらけ出したために大変長い製作記になってしまいましたが、これから自作にチャレンジされる方の少しでも参考になれば幸いです。コロナ禍の中外出を控えられている方も多いと思います。是非、自作で気分転換を図りつつ愛機を手に入れましょう。

©2022 Norimichi Kawakami

  • フルサイズの図面 — このプロジェクトで作成した1/3スケールの三田式三型改1の実物大図面はこちらのサイトでご覧いただけます。 興味のある方は是非ご覧ください。 自由にコピーできます。

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