1/3 スケール三田式 3 型改 1 製作記
マルチパートシリーズの第5部。
If you prefer you can read the English translation of this article, which was provided by the author. この記事に進む前に、このシリーズの 第4部 を読むことをお勧めします。
製作その16 エレベータ操縦系統
操縦桿ジンバル機構が出来上がったのでこれに繋がるエレベータ操縦系統を製作しました。製作過程で操縦桿ジンバルシステムに設計ミスがあることが発覚しました。その改修を行って、エレベータ操縦系統を製作しました。
エレベータ操縦系統の概要
実機のエレベータ操縦系統は、後席操縦桿のジンバルより上に取り付けられたヒンジから伸びるプッシュプルロッドが、後席の下を通って主脚を取り付けている台形トラス構造に取り付けられたベルクランクに接続され、そのベルクランクの両端から2本のワイヤーが伸びて、水平尾翼下のベルクランクに繋がります。両ベルクランク間を繋ぐワイヤーは構造上クロスさせています。つまり、前側ベルクランクの上部から伸びるワイヤーは後側ベルクランクの下部に繋がれ、前側ベルクランク下部から伸びるワイヤーは後側ベルクランクの上部に接続します。水平尾翼下のベルクランクからエレベータへの接続は、図面14と画像40に見る通りです。
後席の下を通るプッシュプルロッドは取付上の理由で、図面25の如く屈折しています。そこで、1/3模型では屈折部でロッドを2分して、間にサーボを入れることでエレベータと操縦桿の両者を動かす機構にしました。図面26がその図面です。
この図面に基づいてエレベータ操縦系統を作っている過程で、ジンバル機構の設計ミスが発覚しました。
失敗その8 ジンバル機構の設計ミス
ミスは2か所ありました。一つは後席ジンバルの上に取り付けたプッシュプルロッドのロッドエンドの形式です。これはベアリング入りの回転型ロッドエンドにしていました。側面図ばかりに目がいっていたのでこのようなロッドエンドで良いと思い込んでいましたが、プッシュプルロッドはエルロン操作に伴って左右にも振れます。しかしロッドの他端はサーボに取りつきますので、左右には動きようがありません。即ち、プッシュプルロッドの両端に取り付けるロッドエンドはそのような動きを許すために、スフェリカルベアリング形式でなければなりません。設計変更して、RCヘリコプターの操縦系統に用いる球面ベアリング入りロッドエンドに交換しました。
二つ目のミスは、前後席のジンバルを繋ぐ連結棒の取付機構です。ジンバルと連結棒の取付け剛性が不足して、エルロン操作で前後席の操縦桿の傾きに大きな差が発生してしまうことが判明しました。
通常のタンデム式操縦桿では前後席のエルロン軸が一本で繋がっており、それがトルクチューブとしてエルロン操舵力を伝えていますので、前後席の操縦桿はエルロン方向の操作に十分な剛性があります。しかし、本機の前後操縦桿のエルロン軸は繋がっていません。そのため、本来はエレベータ操作を連動させる連結棒がエルロン操作を連動させる役割も担っています。そのためには連結棒とジンバルの結合は左右方向に十分な剛性を持つ必要がありますのに、単純なロッドエンドで繋いだために剛性が不足してしまいました。改めて、実機のこの部分を調べてみると、画像81のようにかなりゴツイ金具で繋がれていることが判りました。
ジンバル改修
以上を踏まえてジンバルの改修図面を書きました。
連結軸との結合部は実機同様の構造にしました。図面に基づいて改修したジンバルが画像87です。
エレベータ操縦系統の取付
ジンバル機構の改修が済んだので、続いてエレベータ操縦系統も組み込みました。画像88がサーボと前側ベルクランクの連結状況です。
次いで、画像89が前側ベルクランク部の拡大写真です。写真のピントがボケてしまいましたが、ベルクランクにはワイヤーの張力調整用にターンバックルを取り付けました。このターンバックルはミニ旋盤をお持ちのクラブ仲間に太さ5㎜の真鍮棒から作ってもらいました。
画像90は胴体の中を後方向に見た写真です。
後胴の中ほどに木製ステーが取り付けられていますが、これはクロスするワイヤーが互いに擦れ合うことを避ける為と、ワイヤーが振動で暴れることを防止するもので、実機にも同様なものが付いています。
最後に、後部ベルクランク部分の詳細です。
未だワイヤーは仮留め状態です。
その17 中央翼プランクと翼胴結合金具
2018年の10月末、大分涼しくなってきたので屋外でのバルサのサンディングができるようになりました。そこで、夏前から放置してあった中央翼のプランク作業を行いました。併せて翼胴結合金具も製作しました。
中央翼のプランク
プランクは2mm厚バルサ板で行います。中央翼は前縁から後桁の間が完全にプランクされて翼型形状を確保すると共に、後桁ウエブと一体となってD型スパーを形成して翼の捩じり剛性を確保する役割を担います。前縁から後桁までの距離は翼上面で約280㎜あります。通常バルサ板は80㎜幅にカットされて販売されていますので、板4枚を繋ぎ合わせる必要があります。このバルサ板の繋ぎ合わせ作業は意外に面倒です。もう少し幅広の板が無いかと探したらワールドモデルスで販売している板が95㎜幅であることが判りそれを購入しました。これならば3枚繋ぎで済みます。長さ900㎜のバルサ3枚を繋いだ板を4枚用意しました。その板の表面になる側を軽くサンディングして凹凸を無くします。
まず下面のプランクから開始しました。作業は中央翼組立治具の上に接着防止用の薄いポリエチレンシートを敷き、その上にプランク用板を置いて上からリブ組立を載せて押さえつけ、低粘度瞬間接着剤を要所に垂らして留める、と言う要領です。リブと組立治具は元々一体であったものを切出していますから、2mmのプランク材を挟んでもかなりシックリと合います。
接着が完了したら治具から降ろして、スポイラー部分を内側から切り取ります。この状態で、エルロンサーボ用の延長コードを組み込みます。コードは前縁付近を走らせて、少しでもテールヘビーになることを避けます。画像92は下側プランクが完了した左側中央翼です。
続いて上側プランクです。上側スポイラー溝はプランク後に内側から切り取ることができないので予め慎重に位置合わせをして切り取っておきます(画像93)。
次いで厚板に載せた組立治具に翼を置いて、リブや桁、縦通材にタイトボンドを塗っていきます。上側プランクは手が入らないので瞬間接着剤が使えません。タイトボンドの塗り残しが無いことを確認した上で、プランク材を慎重に位置確認した上で被せます。その上からヒノキの細棒を数本被せて、ゴムひもを厚板の側方に打ち付けてある釘に引っ掛けて組立治具ごと押さえつけます。
これでプランク材がリブや桁にしっかり密着することを期待している訳です。プランクが完了したら、幅15㎜の細い棒を4㎜厚のバルサ板から切出して前縁に貼ります。接着剤が乾燥したらサンディングして前縁形状を整形しました。
このようにしてプランク作業が完了しましたが以後注意すべきことが判りました。今回の1/3模型は流石に大きく、上側プランクの為に塗るタイトボンドの塗布範囲も可也の長さになります。タイトボンドは速乾性がうたい文句で、塗布後5分以内に部材を密着させるように説明書に書かれていますが、中央翼の片側上面を塗布するだけで、5分を若干オーバーしてしまいました。そのため、塗布したタイトボンドの表面が乾燥を始めようとしているギリギリの状況でした。今後の外翼では、もっと広い範囲のプランクになりますからプランク板を二分して、作業を分ける必要があります。
翼胴結合金具の製作
続いて中央翼を胴体に取り付ける金具の製作に取り掛かりました。その部分の図面です。
前桁から下に伸びる金具が、胴体左右に走る梁から前方に突き出した2本のボルトに取り付けられることは実機と同じです。しかし後桁と胴体の結合金具は実機と異なります。実機は画像95のような金具で結合されています。
この金具の製作にはフライス盤が必要ですが金属加工の得意なクラブ仲間もミニ旋盤しか持っていません。そこで、ホームセンターで手に入るアルミのL型チャネルで製作する構造に変えました。
画像96が製作した金具です。
前側金具は廃棄したラジコン固定翼の主脚に使われていた3mm厚の硬質アルミから切出し、後側は2mm厚L型チャネルから切出しました。
これらの金具をまず胴体に取り付けてから、中央翼を載せて取付位置を求めました。画像97は最終的に金具で胴体と中央翼を結合した状況です。
実は金具製作後この状態に達するまでが少々大変でした。最初は前側金具で翼胴を結合した状態で主翼と胴体の直角度を測ってみました。中央翼の翼端と胴体最後方の間に糸を張ってその長さを左右で比較する方法です。その結果は右側の糸が左側より13㎜程長いことが判明しました。つまり、主翼が胴体に対して若干左向きに取りついていることになります。
その原因は前桁を取り付ける胴体側の横梁が機軸に対して若干左向きになっている為と思われます。実はこの梁を取り付けるときにその直角度確保が極めて難しかったのです。胴体は上から見て後方にテーパーしていますので機軸が判りません。胴体組立治具の底面には機軸を示す図面を貼りつけてありますが横梁との間は200mm程の空間がありますので、横梁位置での正確な機軸が大変分かり難かった訳です。このため横梁が若干斜めに取り付いてしまったものと思われます。この不具合を修正するために、前右側取付金具と中央翼桁ウエブの間に0.5㎜のシムを噛ませました。その結果主翼は胴体に直角に取りつきました。
次いで、前側を結合した状態で後側金具を取り付けてみると、左側はピッタリ合うのですが、右側金具と後桁ウエブの間が0.5㎜程開いてしまいました。前側金具にシムを噛ませた影響です。仕方なくここにも0.5㎜のシムを挟みました。
スポイラーサーボ取付と調整
中央翼が胴体に取りつくことができましたので、中央翼にスポイラーサーボを取り付けました。
スポイラー作動用ワイヤーとサーボが接続できましたので、スポイラーの調整を行いました。スポイラーの上面にはバルサの細板を貼りつけてあります。このバルサ細板は翼表面より多少飛び出して取り付けてありますので、スポイラー閉状態で翼表面に一致するように削る訳ですが、サーボの作動位置との兼ね合いを微妙に調整する必要があります。
スポイラー閉方向にサーボを作動していくとある位置でサーボがジッターを生じます。ジーと言う音を発生してサーボが小刻みに動く状態です。これはスポイラーが閉まっているのに更に閉めようとサーボが働いているためです。リミットスイッチが付いていない本機のようなスポイラー形式では必ず発生します。
この状態では無用な電力を消費しますしサーボにも良くありません。また、下手をするとワイヤーが切れる恐れもあります。そこで、画像99のようにサーボテスターを取り付けて、サーボがジッターを起こす直前の位置を探します。その位置がスポイラー全閉位置になりますので、その状態でスポイラー表面が翼表面と一致するように上面に貼りつけたバルサを削って調節しました。これで画像100に示すようにスポイラー閉状態で平滑な翼表面になりました。
次いでサーボテスターのつまみを反対方向に回してスポイラー開の状態を確認しました。
この時点ではこれで上手くいったと思っていたのですが、実はこのスポイラー飛び出し量が失敗3に記したように少な過ぎた訳です。
木地完成した中央翼
このようにして中央翼が完成しました。残すはカバーリングのみです。
因みに左が717g、右が737gです。右側が左側より20g重くなってしまいました。プランク材の重量ばらつきと、カンザシ受けのアルミチューブ周りに大量に塗ったエポキシ樹脂の使用量差が原因と思われます。
性能予測
目標重量の決め方の不備で計画より大幅な重量増加が避けられない事態になりました。それに伴って、グライダーとしての性能がどの程度変化するのかが気になります。そこで1/3三田式の飛行性能の予測計算を行いました。併せて、手持ちの1/5三田式との性能比較も行いました。
性能推算方法
性能推算は東京大学出版会発行の加藤寛一郎 他「航空機力学入門」を参考に航空機の縦の釣合計算式をEXCELに記述して行いました。即ち、指定した速度で主翼、尾翼、胴体に働く空気力(揚力、抗力、ピッチングモーメント)が重心位置で重力と釣合うまで、降下角度と機体姿勢角およびエレベータ舵角を変化させて繰り返し計算しました。
翼型の空力特性
今回の性能推算で注意したのは翼型の空力特性(揚力特性、抗力特性およびモーメント特性)です。通常の航空機の性能計算では翼型の空力特性は無次元化した揚力係数CL、抗力係数CDおよびモーメント係数CMが飛行速度で変化しないとして計算します。しかし、基本構想その4で検討したように、本模型のサイズと飛行速度範囲では主翼翼型の空力特性がレイノルズ数Reによって大きく変化する領域にあります。そこで、今回の性能計算では主翼翼型の空力特性を飛行速度に対応したRe毎に与えてレイノルズ効果を考慮した計算としました。因みに速度30Km/h、40Km/h、50Km/hでの本機のReはそれぞれ193,000、258,000、322,000ですが、それらの速度での主翼の揚力係数CL、抗力係数CDは下図のようになります。
揚力係数には大きな変化がありませんが、抗力係数に大きな変化が認められます。速度が上がるほど、Reが上昇して係数が小さくなることが判ります。従ってグライダーとしての滑空性能も速度が上がるほど改善されます。因みに翼型の空力特性は米国マサチューセッツ工科大学(MIT)で開発されたソフトで、低レイノルズ数での翼型解析に定評のあるXFOILを内蔵したXFLR5を用いて計算しました。事前に低Reでの風洞試験データと計算値を比較して本ソフトの信頼性を確認しました。
1/3三田式の推定性能
このような準備をして1/3三田式の性能を推算しました。まず、グライダーとして最も重要な滑空比の予測です
重量は8Kgから11Kgまで1Kg刻みで計算しました。最大滑空比は22を若干超える予想です。重量が増えるほど最大滑空比も増えますが、最大滑空比が得られる速度も増加します。通常のグライダーの滑空比は最良滑空比速度を超えるともっと急速に落ち込みますが、本機では速度増加に伴うRe効果で落ち込みが緩やかなことが判ります。従って比較的広い速度範囲で良好な滑空比が得られそうです。
次は降下率(沈下率)です。
降下率は低速ほど軽量なほど小さな値になります。重量8Kgの時の最少降下率は時速30Kmで飛行した時に得られて、その値は毎秒40cmを切りそうです。重量ごとのカーブの始まる最少速度が異なっていますが、それより左側の低速域では失速して飛べないからです。最小降下率は軽量なほど小さくなり所謂「浮きが良い機体」になりますが、重量が10Kgになっても毎秒50 cmを切れそうです。
最小沈下率速度は失速限界付近にあるためスケール機を安心して飛ばすにはもう少し速度を上げる必要があります。面白いことに、失速を起こさない速度域では重量が重いほど降下率が小さいと言うことです。従って重量増加にそれ程神経質にならなくて良さそうです。
重量が重いほど降下率が小さくなる理由は、グライダーの降下中の飛行に必要なパワーが機体のポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)の減少によって補われることから生じる現象です。
即ち、ポテンシャルエネルギーの減少は機体重量と降下率の積で与えられますから、同一降下率ならば重たい方が大きなパワーが得られます。一方、降下中の飛行に必要なパワーは重量によってそれ程大きな違いは在りません。その理由は、飛行に必要なパワーは機体形状から生じる空気抵抗(形状抵抗)と、揚力を発生することで生じる抵抗(誘導抵抗)の2つの抵抗が消費するパワーですが、これらの抵抗が重量によって殆ど変化しないからです。
何故なら、形状抵抗はグラフ9に示した翼型の抵抗特性で明らかなように、重量増加で迎角が多少増えても抵抗増加は微々たるものです。誘導抵抗は重たい程大きいのですが、速度が上がると指数関数的に減少するので、降下速度付近では非常に小さな値になるからです。そのために、重量増加による飛行に必要なパワーの増分に対して、重量増加によるポテンシャルエネルギーの増加の方が大きいので、結果として重たい方が降下率が少なくて済むことになります。
1/5三田式との比較
参考のために手持ちの1/5三田式の性能計算も行って1/3と比較しました。
滑空比の比較です。1/5の重量は約2.8Kgです。1/3は仮に9Kgとしました。1/5の最良滑空比は17程度しかありません。これでもグライドにそれほど不満を感じていませんが、1/3では30%程度改善されそうで期待が持てます。
降下率も下のように改善されます。
これらの性能差の原因は1/3と1/5のレイノルズ数の相違による主翼の空力特性の違いです。飛行速度35Km/hでの両機の主翼の揚力係数と抗力係数を比較した下図を見れば一目瞭然です。
尚、実機はレイノルズ数が更に増えるので性能も模型より優れています。データによると最良滑空比は30.8ですが、その滑空比を与える飛行速度は80Km/hと、随分高速になりますし、最少降下率も72cm/秒とのことです。翼面荷重が大きいのでこのような特性になります。
以上から、1/3の飛行性能は1/5よりかなり改善されて浮きの良い機体となり期待が持てそうです。また重量増加もそれほど気にする必要は無さそうです。
製作その18 外翼のプランク
中央翼のプランクに続けて外翼のプランクを行いました。
外翼下面のプランク
外翼のリブ組は2018年8月初旬に完成していましたがプランク作業はプランク材のサンディングで大量のバルサ粉が飛びますので、暑く湿度の高い夏場を避けて11月まで放置していました。
まず左翼下面のプランクから開始しました。下面プランク板を切出す型紙を作って、それを用いてバルサ板から切出しました。次いで組立治具の上にポリエチレンシートを敷いてその上にプランク板を置き、上からリブ組立を載せましたが、2.5㎜のバルサ薄板製の治具は3か月の間にかなり反ってしまいましたので、プランク板やリブ組立とシックリと合いません。色々変形させてどうやら落ち着いた所で、低粘度瞬間接着剤で一気に接着しました。しかしここで大きなミスを仕出かしてしまいました。
失敗その9 外翼の変形に気が付かずにプランク
この時、3か月の放置期間中に生じたリブ組立の変形も良く確認しておくべきでしたが、治具の変形にばかり注意が行ってしまいました。下面プランクが完了した時点で横から桁を通して眺めてみると、真直ぐであるべきカーボン製の桁フランジが僅かに湾曲しているではありませんか!
リブ組立が完了した時点で撮影した写真は画像49に示すように桁が真直ぐに通っていました。瞬間接着剤を流す前にもう少し慎重に確認しておくべきと悔やまれましたが後の祭りです。最早修正のしようがありません。痛恨のミスです。
気を取り直して、中央翼と接続して曲がった桁の影響程度を確認しました(画像104)。本来は、中央翼と外翼の前縁は一直線ですが、外翼前縁が0.57°程後退角を持ってしまいました。スケール機としては大きな失敗ではありますが、救いは外翼は上反角を持っているので外翼前縁は殆どの場合、若干後退しているように見えます。このことは、前縁を真直ぐに通して製作できた1/5の写真(画像105)でも確認できます。つまり、見栄えとしては殆ど判らないであろうこと、更にこの程度の後退角は飛行特性に殆ど影響しないであろうと思われることと併せて、このままで行くことにしました。
上記の問題は右翼のプランク前に発見できたので、左右対称とすべく、右翼は敢えて、わざと0.57°の前縁後退角を付けてプランクしました。
本来はリブ組立完了に続いて、間をあけずにプランク作業も行っておくべきでした。
教訓5 翼の組立は一気にプランク迄進めること。リブ組立のまま長期放置すると変形する。
エルロンヒンジの問題点発見
下面プランクが完了した時点でエルロンを装着してみたら、本来滑らかに接続しなければならない翼本体とエルロン下面との間に段差があることが見つかりました。しかもその段差がエルロンのスパン方向の位置によって差があり、最大で2mm程エルロンが上側に付きすぎていることが発覚しました。これでは折角のフリーズ型エルロンとしての機能も発揮できません。
失敗10 エルロン取付位置が不正確
原因は外翼後桁に付けたエルロンヒンジの位置が正確で無いためと思われます。このヒンジは桁に開けた穴に差し込んで止めたものですが図面位置通りに取り付かなかったものと思われます。手作業で開けた取付穴に位置決め治具も使わずに取り付けてしまったことが原因と思われます。本来は下面プランクが完了した時点で、エルロン下面との位置関係を慎重に確認してからヒンジを取り付けるべきでした。
仕方がないのでヒンジを取り外して再取付しましたが、ヒンジはカーボン製でシナベニア製の後桁ウエブとは瞬間接着剤でカッチリと接着したのでその取外しには大変苦労しました。作業手順をしっかり考えて工作しないとトンデモナイ目に遭う典型例となってしまいました。
苦労して何とかヒンジ位置の修正を済ませエルロンサーボも取り付けて、上面プランクに備えて上側ストリンガーも張りこみました。
外翼上面のプランク
続いて上面のプランクに入りました。接着剤のタイトボンドの塗布後5分以内にプランク材を貼るために、中央翼プランクの経験から外翼上面はプランク板を2分割して別々に貼りました。そのために、分離位置のリブには同形のリブを貼ってプランク板の糊代が架かるようにしました。プランク板を貼ってから細いヒノキ棒とゴム紐で組立治具に抑え付ける工法は中央翼と同じです(画像94参照)。
ここまでは順調に作業が進んだのですが、中央翼と繋ぎ合わせてみて思わぬ不具合が見つかりました。下面プランクの時に外翼前縁が0.57°程後退角を持ってしまいましたが、その影響は中央翼に繋がる外翼最内端のリブが中央翼の最外端リブと並行では無いという形で現れました。下の写真のように両翼の前縁が約4㎜程開いてしまいました。
これではいかにもみっともないないので修正しなければなりませんが、外翼は上反角を持っているために、この隙間を埋める作業は少々大変でした。2mmバルサを階段状に2枚貼りつけて、中央翼と繋ぎ合わせて様子をみながら慎重にヤスッテ何とか修正しました。同時に、貼ってあった前縁材も整形して翼形状として完成させました。(画像108)
上手な人がやれば隙間が見えないほどになるのでしょうが、小生の工作技量ではこの程度で可としなければなりません。
エルロン及び翼端取付
プランクが完了した外翼にエルロン前縁上部に覆い被さるリップを取り付けてからエルロンを装着して、その作動範囲を確保するようにリップの長さを調整しました。その後、翼端を取り付けて主翼コンターと翼端がスムースに繋がるように、翼端を整形して外翼の木地を完成させました。
主翼組立
外翼を既に完成している中央翼と繋いで一つの主翼に組立てて胴体に載せてみました。
中央翼の真ん中のスポイラーサーボがある部分は、むき出し状態ではみっともないので、実機と同じような翼カバーを被せました。
だんだん航空機の形状が現れてきてテンションが上がります。
第7次重量重心計算
中央翼と外翼の木地が完成して前胴と後胴も繋がったので重量重心を再計算しました。中央翼は現状で1,715gです。残作業はカバーリング190gと塗装30gと見込ます。外翼は左が818g、右が833gで、残作業はカウンターウエイト搭載とカバーリング&塗装で、左右それぞれに155g、154gを見込みます。胴体は完成済が1,340g、残作業として上下左右への張出構造に264g、モーターマウント50g、ラダーサーボ系統70g、機首フェアリング324g、キャノピー550g、カバーリング75g、塗装70g、その他50gで合計1,453gと見込みます。これらを元に重量重心計算表を改定すると次のようになります。
合計8,687g、重心合わせの錘322gと併せて総計9,009gと見込まれます。先に予想したように主翼と胴体重量の目標値が小さすぎました。実績率は59.2%に達し今後は余り軽量化余地がありません。