なんとこれプロジェクターじゃないんですよ。

懲りずに着物でUSA (2016 Autumn)

2016 Autumn (Seattle/Bellevue/Redmond)

・洋服は着ない、持って行かない。服装は機内含め、着物のみ。

・スーツケース、ダメ、絶対。荷物は風呂敷に包む。

着物出張シリーズ。久しぶりに米国に着物で出張に行ったので、海外出張、あるいは海外旅行を考えている男子の参考になればと思い、書いてみます。

今回は2016年11月13日から17日まで五日間(現地にいたのは実質三日間)でした。主目的はマイクロソフト本社訪問です。


気候下調べ

シアトルに行くのは初めてです。気候を調べると、11月のシアトルの気温は東京とかなり近くて平均気温が5–12度ぐらい、しかしながら毎日雨が降る、という感じでした。気温が東京と近いのは出張者にはありがたいのですが、雨対策をどの程度するか、というのが悩みとなりました(後述しますが、結論としては雨対策しすぎました)。

装備

雨がどの程度激しいかがわからなかったので、激しい雨でも気兼ねなく過ごせるよう、足元も下駄+爪掛けで万全にしたほか、交織・ウール体制で仮にずぶ濡れになっても気にならない打線を組みました。また、寒さ対策をしすぎると室内で暑いので、適当に手を抜き、下着を麻にしたり、単衣を組み合わせたりしました。

※この人は常にふんどし!のイメージが強いようなんですが、寒い季節はステテコです

着ていった

・ステテコ
・麻の肌襦袢
・モスリン長襦袢
・長着(ウール単衣、大島風の柄)
・羽織(交織)
・角帯
・黒足袋(ネル裏)
・下駄+爪掛け
・ハンチング帽
・アフガンストール(シュマグ、首に巻く)
・レッグウォーマー

持って行った

・長着(袷 大島)
・お対の長着+羽織(大島風の交織、単衣)
・黒足袋(ネル裏) x 2
・角帯
・羽織紐
・羽織紐予備
・甚兵衛(部屋着、緊急時用)
・着物ハンガー(折りたたみ式、短いやつ)
・雪駄
・超撥水足袋カバー+携帯用防雨ポンチョ

ベルギー編のときに体験した寒い雨をイメージしていたので、前準備として、持っていくすべての着物の下半身に防水スプレーを吹きまくりました。

なお、今回も毎晩洗濯前提の装備です。

空港まで

私は都内に住んでいるのですが、成田発のときには、ちょっと時間とお金がかかってでも横着してNEX(成田エクスプレス)に乗ることにしています(羽田のときは近くの駅からバスで行きます)。多くの場合、京成スカイライナーのほうが早くて安いのですが、乗り換えが多くなり、特に日暮里での上下移動の多い乗り換えは重い風呂敷を背負っている身には辛いためです。

今回も新宿駅で悠々とNEXに乗り、網棚に唐草風呂敷を載せ、座席にどっかりと座って買ってきたお茶をすすりつつ、旅のはじまりの高揚感を満喫していたのですが、その直後に人身事故のアナウンス。

結局乗っていたNEXと数本の列車が運休となり、その辺にいた、状況がよくわからずに困っている韓国人レディを一緒に成田に案内することになりました。

結局なんとかギリギリで飛行機には間に合ったのですが、外国人観光客には京成とJRの違いもわからないし、払い戻しの手順、乗り換えの手順などの案内も不十分で、日暮里駅は各所に行列ができるなど、大混乱でした。

チェックイン

今回はデルタ航空でした。風呂敷はビニール袋やダンボールに入れることなく、そのまま預かっていただけました。これまでの出張では、日本の空港のカウンターでは風呂敷をそのまま預かってくれないのが通例だったですが、何かルールが変わったのでしょうか。なんにせよありがたいことです。

機内

フライトは9時間の直行便です。羽織と帽子を脱ぎ、頭上のコンパートメントに格納。帯の結び目をぐるっと回して前に持ってきました。

東京とシアトルとの時差は17時間。搭乗したのが17時過ぎなので、すでに真夜中なので、できれば寝られるだけ寝たいところです。数日前から早起きをしていたので、機内食を食べた後、盛大に寝ることができました。たぶん6時間くらいは寝ていたと思います。

機内が暑くなったり寒くなったりするのには、レッグウォーマーをつけたりはずしたり、ストールを首に巻いたり取ったりして調整しました。

到着→荷物受け取り→入国

到着から入国はたいへんスムーズでした。今回は、数社の同業のマイクロソフトパートナーの方々と一緒にマイクロソフトさんを訪問するという主旨の出張なのですが、空港で無事合流し、空港からホテルまで各々Uberで移動となりました。

空港のUber待ち合わせ場所。

空港にもUber/Lyft用の乗り場所があり、だいぶ生活に溶け込んでいる感がありました。もう少し後の出来事ですが、ホテルでタクシーを呼んでもらおうとしても、今は捕まりにくいのでUberで呼んでくれ、と断られることもありました。

SIMカードは日本のアマゾンでZIP SIMを事前に買って持っていき、すぐに通信可能となりました(ただし、後述するように、大障害があり丸一日通信不可になる事件が起こりました)。

市内

到着したのは日曜日の朝。早めにチェックインして、ちょっと落ち着いて昼の1時ぐらいです。

ホテル到着直後。手荷物回収場からタクシー乗り場が近かったため、風呂敷は合体させずにバラバラに持っています。遠いときは合体させて背負います。

が、市内といっても、宿泊先のホテルはシアトルのダウンタウンの東にあるベルビュー、訪問先のマイクロソフトはそこからさらに東に行ったレドモンドにあるので、観光スポットにいく隙はまったくありませんでした。クラムチャウダーも、スペースニードルもパイクプレイスマーケットもボーイング社見学も一切なしの超硬派出張です(笑)

初日ホテルチェックインの直後に、偶然ホテルの近くに住んでいることがわかり、連絡をくれた森村氏(HDEの共同創業者)にお願いしてベストバイやスターバックス等に連れていってもらいました(ありがとう!)。

心配していた雨は、ずっと降り続いてはいましたが、それほど酷くは無く、移動も車になるため、普通の雪駄に普通の足袋+折り畳み傘みたいな装備で十分乗り切れそうな感じでした。重武装しすぎた感があります。

気温は滞在中7-13度ぐらいで、準備してきた着物でちょうどよい感じでした。ただし、現地の方はTシャツ姿で出歩いて買い物してました。慣れなのか、あるいは筋肉の厚さなのか。

ほとんど外を歩いていないため、それらしい写真がありませんでした。いつもだったら必ず行くドラッグストアとかスーパーマーケットとかにも行きませんでした。

マイクロソフトとスターバックスの影

空港にマイクロソフト専用チェックインカウンターがあったり、ホテルに普通にマイクロソフトのロゴが入ったインタラクティブテーブルが置いてあったり、部屋のコーヒーがスターバックスだったり、あーシアトルに来たんだなーという感慨がありました(ただしシアトルダウンタウンは未体験)。

ハイアットのロビーに何気なく設置されている、マイクロソフトロゴのついたインタラクティブテーブル。これはたぶん、初代「Surface」ですよね?

Kimono Guy Mk.II

今回は普段東南アジアにいるミスター・カワミナミが、着物姿に付き合ってくれました。

カワミナミは京都出身・表千家のガチ茶道家。僕自身はもう2年間もこんなブログを続けていますが、「着物で出張」する人にはついぞ出会わないので、「出張先で着物」の彼の話のほうが参考になるかもしれません……ちなみに僕が首に巻いているのは前回の台湾編で紹介した300円のアフガンストール。

カワミナミは行き帰りは普通に洋服で、現地でだけ着物を着ていましたが、七分丈長T+半襦袢+お召の長着(袷・一つ紋)という装備でした。

マイクロソフト本社での体験

月曜日と火曜日はマイクロソフトさんで、朝から晩までみっちり、同時通訳付きのミーティングです。朝食、昼食も部屋で食べるというみっちりっぷりです。

「キャンパス」の意味

電源を入れると黒い画面に白い文字で “Copyright 1979 (C) by Microsoft” と表示されるパソコンでプログラミングを覚え、その体験のお陰で現在もIT業界で働く私の同社に対する思い入れは愛憎入り交じる大変深いもので、本社に赴くということは自分にとっては特別な出来事でした。

……が、その体験は私が思っていたものとだいぶ違いました。僕の脳内イメージでは、なんかでかい高層ビルみたいなランドマークがドーンと立っていて、「マイクロソフト本社、なう!」みたいな感じを想像していたのですが、実際に来てみると

会社というよりかは一つの「町」

でした。どれが公道でどれが私道なのかもわからないほど広大な、緑の多い開放的な敷地内に建物が果てしなく並び、建物間の移動には構内シャトルバスを使います。

ビル間の移動はこういうシャトルバスで。夜になると運行が無くなる感じっぽかったです。

米国の会社の人たちが自分たちの社屋を「キャンパス」と呼ぶことの意味がわかりました。

ちなみに私達がメインで滞在した Executive Briefing Center は “Microsoft Building 33” の中にあり、地図上で、そうした番号がついた建物がいくつぐらいまであるのか調べてみたところ “Microsoft Building 126” まで存在を確認しました(笑)凄いスケールですね。一つ一つのビルにそれほどの高さは無く、敷地が広いからXY方向に広がるんだなあと感心しました。

HoloLens 体験

滞在中に、デモ等でしか見たことがなかったマイクロソフト社の新しいハードウェアである HoloLens (ホロレンズ)を実体験する機会があり、その可能性に舌を巻きました。

バスで移動し、秘密の研究所めいた専用の体験施設のあるビルへ。まだ未発売の製品のため、施設内部の写真撮影は一部を除いて禁止でしたが、体験は語って差し支えないということだったので、ここで、着物ブログの途中ではありますが、気づいたことをお送りいたします。

HoloLensは、Oculus RiftやHTC Vive、PlayStation VRとよく似たメガネっぽい外観をした機器で、装着方法も利用方法も似ているのですが、実際のところは下記の点で大きく異なります。

  1. 視界を完全に遮蔽しない:スクリーンはそれほど広くなく、メガネをかけている間も現実世界は見えている状態で、視界を完全に遮蔽することはできない。視界の中央エリアで現実世界に何かを追加投影するのがメインの機能(こういうのをVRに対してMR: Mixed Reality と言うらしいです)。
  2. 完全に独立して動く:このメガネ自体が「本体」であり、他の「本体」となる機器を必要としない。本体につながるケーブルも無い。

現地では、ゲームや火星表面の探索、新車デモンストレーション、スカイプによる遠隔支援を受けながらの電気工事CADソフトとの連携の5つのシナリオを体験しましたが、中でも可能性を感じたのは最後の2つで、現実世界と仮想世界がシームレスにつながるのは、VRメガネ等では体験できない世界だなと思いました。

例えば、

  • スカイプの通話画面を任意の(現実の)平面に固定
  • スカイプによる作業の遠隔支援。支援者が空間上に矢印や図を書き込み、作業手順を教える。
  • CADソフトのウィンドウのへりからさらに左にマウスカーソルを動かすと、カーソルがディスプレイのへりを超えて(!)空間上に飛び出し、机の上に投影された3Dオブジェクトをマウスで操作できる
  • その3Dオブジェクトのオートバイのカウルの色を変えると、現実世界のバイクの骨組み(本物)の上に、同じ色のカウルが投影される

など、文字では説明しづらいような、新しい体験をしました。操作は声、指のジェスチャー、マウスなど、様々な方法で行うことができました。これは人間の行動を大きく変えうる技術だと思いました。

私が体験したCADのやつはこれのちょっと違う版でした。マウスカーソルが飛び出すのに鳥肌が立ちました。

逆にゲーム等では、VRメガネと比べて没入感が少ない(視界を遮蔽しないため)ことは弱みになると思うので、ゲーム画面を現実世界と混ぜることによる面白さを活かす必要があるんだろうなと思いました。よくデモ動画で見るマインクラフトなんかは良い例だと思いました。

例えばこういうやつですね

あえて白状すると、HoloLensのデモはYouTubeだけでなく、生でも見たことがあったのですが、「どうせこれはコンセプトデモで、ホントはもっとショボいんでしょ?」と思っていました。しかし、現実に実体験してみると、たしかに視界の広さなど、デモ動画では多少盛っているところはあるものの、概ね本当に実現されており大変驚きました。

カワミナミはちゃんと許可されているエリアで写真を撮っていた。左はマイクロソフトでOSSを推進する石坂さん。着物でも問題なく装着可能。

その他

その他OSS、IoT、Azure、Office 365などをテーマにしたミーティングがありました。着物ブログの範疇を超えるので詳細は省きますが、マイクロソフトは、2000年前後のイメージのような悪の帝国ではなく、子供の頃に憧れた、技術者が活き活きと活躍するクールな会社そのものでした。

マイクロソフトの技術者の方がMacでプレゼンしてTerminalでハンズオンですよ。明るい21世紀が来ました。事前に昔のイメージで「マイクロソフト本社を訪問するのに、僕、Macbookで大丈夫ですかね?」と質問した私がアホでした。
Surface Studioも触ってきました。全般にExecutive Briefing Centerはとてもハイセンスな空間でした。
20年勤続した人はこのガラス柱に名前を刻んでもらえるらしい。初期メンバーはおなじみのこの方々。

その他2

そういえば、マイクロソフトまでの道中、Uberでナビしている途中に、Uberのアプリから突然「Uberに入社するチャンス!Hacker Challengeを受けてみないか?」みたいなのが出てきて、「はい」を押すと技術者向けのリクルーティングチャレンジの画面が出てきました。マイクロソフトに向かう技術者にターゲティングした採用企画なんでしょうか。米国のIT技術者不足が窺い知れます。

Uberに入社したい人はマイクロソフトまでUber乗ると出て来るかも。

ホテル

いつも通り、襦袢・ステテコは部屋洗濯をしました。ジャカルタ編から導入したセームタオルを使った脱水で、いずれも朝までには問題なく乾きました。

帰路

今回は、あまり町を歩かなかったこともあり、あまり服装にツッコミが入りませんでした。しかし、帰りの保安検査場で係員の強面のおじさんが “I like your outfit!” と握手を求めてくれたり、警備員や Seattle's Best Coffee の店員の人が声をかけてくれたりしました。とてもうれしかったです。

帰りのフライトは11時間。時差ボケ防止のため、起きていないといけなかったので、少し昼寝をしてから読書して、無事に東京につきました。

お土産を買って往路よりも膨らみましたが、伸縮自在なのもまた風呂敷の利点です。ただし柔らかい箱は角が潰れます(笑)

その他

最終日にZIP SIMの障害でモバイルネットワークにつながらなくなり、難儀しました。

これまで米国に行くときは毎回このSIMを使っていて、人にも勧めていたし、障害に遭ったこともなかったんですが、モバイルネットワークから切断されると、Uberも呼べなくなっちゃうので、セカンドプランが必要ですね。

まとめ

現地でご一緒いただいた皆様、快く歓待くださったマイクロソフトの皆様、ありがとうございました。とても居心地がよく、密度の濃い出張でした。

のけぞっているのであって、腹が出ているわけではありません。

次回はクラムチャウダーも食べよう。

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