「出会う」とは何だろう。
人との出会い、ものとの出会い、場所との出会い、言葉との出会い…。
きっと私の人生はあらゆる出会いによって形作られているが、今こうして「出会う」ことについて改めて考えてみると、特に印象的な出会いというものが思い浮かばない。そう思うと、「出会い」は非日常の中にこそあると思い込みがちだが、実はそれは日常の中の一つの出来事に過ぎず、必ずしも記憶に留めておくべき特別な瞬間ではないのかもしれない。
卒業プロジェクトを思考・試行していくための記録だから、わたしのテーマである「札幌と生活史」の話を書いていきたい。記念すべき第1回で、「札幌」と「生活史」のどちらについて書くか迷った。しかし、「出会う」という単語と照らし合わせた時、「出会った」感覚が強いのは生活史だった。
というのも、このテーマに辿り着くのにかなりの時間がかかっている。デジタルファブリケーション、ソーシャルイノベーション、ジェンダー・お笑い、そして気づいたら生活史。約4年間をかけて、SFCの様々なゼミを渡り歩いてきた。いろんなところでつまみ食いをして、やっと手応えのあるテーマに辿り着いたのだから、「出会った」という感覚が…
『ただいまを言いたくて』は、次年度の「卒プロ」に向けてスタートする、ちいさなメディアである。こうして刊行を決めたのだから、もう続けるしかない。月刊というペースは、思っている以上に忙しいのだが、もう遅い。学生たちが前向きなのだから、ぼくも、つき合う覚悟を決めた。
毎年、「卒プロ」に取り組む4年生には、日常的に進捗をまとめて公開するように勧めている。これまでにも、4年生の活動がウェブマガジンのような形で定期的に公開されていた年があった。進捗が共有されていると、日々のコミュニケーションが豊かになる。