文章をまとめる日
ベランダから室内の方へ振り返り、ここは10年のあいだ私の部屋だったのか、と粗大ゴミとして回収されるのを動かずにじっと待つベッドをながめる。実家を出てから1年とちょっとしか経っていないことに気がつきおどろいた。生活の臭いはあっという間に消えてなくなってしまうみたいだ。棚の奥に隠されたいつの日かのタバコを吸ってみたが、舌がキュッと縮むような苦さですぐ火を消してしまった。自分自身の重さを支えることもままならずにゆらゆらと胴体を揺らす老犬が、部屋のドアからこちらを見つめている。私のことに気づいているのかはわからない。犬の名前を呼んでみたがそこには静寂があるのみで、動きもなければ音もしない。ベランダに侵食している木の枝の近くで何…