意義ある旅路を形作る:dcSpark ー分散化された輝きーについての物語

dcSparkについて

Caro Rossi
dcSpark日本
17 min readJul 4, 2022

--

ブロックチェーンがメインストリームへ向けて躍進を続けてはいるものの、Web2を利用していた大多数の人々は、暗号企業によるソリューションは難しい、複雑で理解しにくい、と考えています。

dcSparkは、業界知識を活用して、次世代テクノロジーであるWeb3の利用をサポートする一連の製品を構築する最善の方法を探求しています。そのために私たちは一丸となって現状を変革し、ユーザーやパートナーが新しいタイプのインターネットと関係性を築けるよう支援しているのです。まずはツールの提供を行い、その後製品をリリースしました。まもなく私たちは暗号エコシステムでスタートアップへのサポートを提供予定です。

このような取り組みが、私たちの旅路を形作っていきます。構築においてdcSparkはその価値を最大限に発揮します。皆さんもこのプロセスに参加してみませんか。

https://www.dcspark.io/jp/

dcSparkの使命についてお話しする前に、私たちの名前の由来をご紹介しなければなりません。それがdcSparkが誕生した理由のヒントにもなるからです。「dc」は「decentralized(分散化された)」を表しています。また「spark」は、さまざまなブロックチェーンエコシステム内でインタラクションできる、新しい分散ソリューションを作り出す方法を常に探求するという私たちの使命と関わりのある言葉です。

社名の意味をご理解いただいたことで、dcSparkに対する印象が変化した方もいらっしゃるかも知れません。とすると、dcSparkのすべてのプロジェクトで「相互運用性」が中心的な役割を果たしていることに驚かれることもないでしょう。

なぜなら、構築して別のプロジェクトに取り組むようでは不十分だからです。dcSparkが自社を「最も将来性のあるブロックチェーンエコシステム(Cardano、Solana、Algorand)に特化した、完全な暗号エコシステムの構築企業」であると定義しているのはこのためです。こうした目標に取り組むにあたり、dcSparkは暗号業界において今最も大きな課題のひとつである「相互運用性」への対処を進めています。

ここで、先ほどの話題が改めて重要になってきます。それでは、dcSparkの創業当初を詳しくご紹介しましょう。

dcSparkの創業

物語は数年前、共同創業者であるNicolas Arqueros、Robert Kornacki、Sebastien Guillemotの出会いから始まります。3人は、開発者やスタートアップ、エンタープライズ、公共機関にソリューションを提供する多国籍のブロックチェーンテクノロジー企業、Emurgoの研究開発部門でともに働いていたのです。

大きな転機となったのは2021年の初めのことでした。3人は、B2C企業を通じてユーザーへの価値提供によりフォーカスしたソリューションを構築できると考えます。そこで彼らはこう自問します。エンドユーザーにフォーカスしたソリューションを構築してはどうだろうか?

それから数か月後の2021年4月、dcSparkが誕生しました。

リモートファースト企業

dcSparkは、米国、カナダ、チリ、イタリア、タイ、ポーランド、トルコ、ウクライナ、日本、ポルトガルなど、10か国以上から43人の社員が集まるリモートファースト企業です。社内では12以上の言語が飛び交い、さらには開発者がRust、Hoon、Typescript、Swift、Solidity、C、C++、Haskelなどさまざまなプログラミング言語を使って構築しています。l

しかし、dcSparkは特定のプログラミング言語に精通すること以上に、プログラミングモデル自体の知識を深めることを重視しています。テクノロジーがどのように関連しているかを詳細に理解することは、単にプログラミング言語の知識があることよりも価値があると考えているためです。現在、あらゆるブロックチェーンは拡張性の問題を抱えていますが、それこそがdcSparkが解決しようとしていることなのです。

グローバルチームを構成するにあたり、dcSparkは好奇心という感覚を共有でき、新たな潜在能力を引き出せる人材を採用しています。また、dcSparkは推進力があり、業務に対するオーナーシップを主張できる、自己管理型の人材を重視しています。チームメンバーは、複数のタイムゾーンにまたがるチームメイトと柔軟に仕事を進めています。チームメンバーのもう1つの特徴は、dcSparkの根幹を成す使命に対し、大きな変革をもたらそうとする独自の要素を持つということです。こうした要素を、私たちは「spark(輝き)」と呼んでいます。

dcSparkの文化について、詳しくはウェブサイトをご覧ください。

dcSparkの取り組み

Milkomeda

dcSparkはMilkomedaのコアコントリビューターです。Milkomedaは新しいプロトコルとして、EVMサポート、およびロールアップコンポーザビリティレイヤーを経由した長期的なスケーリングのプロセスにより、トップクラスのブロックチェーン(Algorand、Solana、Cardano)を強化する役割を果たしています。詳細については、Milkomeda FoundationのMediumページをご確認ください

Flint

複数のネットワークでの体験を効率化することに特化した、マルチチェーンのライトウォレットです。完全なスマートコントラクトを持ち、dAppサポートが組み込まれたこのウォレットは、業界で最も高い相互運用性を実現することを長期的な目標としています。現在、FlintはCardanoでのトランザクションをサポートしています。また、SolanaやEthereumなどの他のブロックチェーンネットワークや、Urbitなどの非ブロックチェーンネットワークにも、まもなく対応予定です。

Urbit Visor/UV Ecosystem

Urbitはユーザーがデータを所有し、IDを管理し、オフチェーンでの分散化コンピューティングやプライベートメッセージングを自身のコンピューターから実施するためのピアツーピアネットワークです。Web3における使命の一環として、エコシステムビルダーであるdcSparkはUrbit Visorと呼ばれるソリューションに貢献しています。これは、ウェブブラウザーを優れたUrbitクライアントにして、Urbitのすべての機能を活用できるというものです。

Fracada

Plutus dAppとして構築されたNFT Fractionalizationプロトコルで、価値のあるNFTの所有権の分割など、さまざまな目的のためにCardano上のネイティブアセットの分割を実現します。FracadaはCardano上で作成された初のPlutusオープンソースdApp で、無料でさまざまな目的に活用できます。

では、話を元に戻しましょう。

Cardanoエコシステムに対するdcSparkの貢献

多くの方は既にご存じのことでしょうが、dcSparkは当初よりCardanoの構築に取り組んできました。dcSparkの創業者たちがCardanoエコシステムでの取り組みに着手して3~4年ほどになります。創業者一人ひとりが持つパズルのピースが、会社の製品を業界の第一線へと導いたのです。

Seba GuillemotはCardano Serialization Libraryの開発でその名を知られています。これはCardanoエコシステムのライトウォレットやdAppなどの製品にとっては非常に重要なコアコンポーネントで、今も日常的に使用されています。彼は、暗号取引所やウォレットで使用される主要パッケージとなった、Cardano Rust SDKの主要なコントリビューターでもあります。これらはいずれも、SebaとNicoが構築したプロジェクトであるヨロイウォレットを通じて初めて具体化されたものです。

Nico ArquerosはdcSpark以前はEMURGOでChief Technical Officerを務め、社内外のさまざまな活動を統括するとともに、開発者のエコシステムの拡大に貢献してカルダノ財団の役員も務めました。

Rob Kornackiはブロックチェーンの研究と何百万ドルもの価値があるシッピングプロジェクトで成功を収めた人物です。RobはEUTXOで新規の研究を複数発表し、最近ではデータの可用性やロールアップにも取り組んでいます。また、TVLで1000万ドル以上(Oracle PoolsとAgeUSDのそれぞれで)のオラクルやステーブルコインプロトコルの実装など、トップクラスの暗号プロジェクトの複数で主要な役割を果たしています。

この結果、dcSparkはCardanoエコシステムの特定のインフラストラクチャを対象とし、ブロックチェーンの相互運用性を高め、エンドユーザーや開発者のためにCardanoのUXを総合的に改善することに注力しています。

これまでのCatalystでの提案

(Fund 5、Fund 6、Fund 7、Fund 8)

dcSparkはコミュニティのニーズに耳を傾け、Cardanoインフラストラクチャを改善するため、Catalystでの提案を通じてさまざまな課題を解決するというミッションに取り組んでいます。

Fund 5

2021年秋、こちらのブログ記事で、日本におけるCardanoコミュニティ構築を実現し、導入を促進していることをお伝えしました。これは、Project CatalystのFund5における提案「Developer Evangelist Japan」で得た資金により実現したものです。

同じ頃、dcSparkはCardano Connector(Metamaskのようなもの)と呼ばれる提案も行っています。なお、これらの資金はCIP30(現在Cardanoのすべてのウォレットで使用されるdAppコネクターの規格)の共同での標準化にも役立てられています。

5,000人以上のデイリーユーザー数を達成し、さらに拡大を続けるFlint Walletは、Cardanoコミュニティの多くのユーザーに、自身のADAを管理し、Cardanoの新しいdAppエコシステムへの参画するためのオプションを提供しています。

Alonzo Proposal向けのCardano Rust SDKアップデート

Fund5でのAlonzo Proposal向けCardano Rust SDKアップデートへの資金提供を活用し、dcSparkはAlonzoエラでも運用を継続するためにアップデートが必要であった、重要なライブラリーの維持を行うことができました。

Cardano Rust SDKライブラリーは、 Coinbaseのような取引所がCardanoエコシステムを接続したり、適切な運用を実現したりするために活用する、主要なコンポーネントの1つです。

Fund 6

Project CatalystのFund6では、Cardanoで初のEVM互換のレイヤー2ソリューションの開発に非常に重要な、3つの大きな提案で資金を得ることができました。Fund6でのこれらの提案の成功により、CardanoエコシステムでMilkomedaを開発し提供を開始することができました。

現在、MilkomedaはDEXからクロスチェーンブリッジまで、10以上のプロジェクトやプラットフォームで、メインネットでの公開に向け準備を進めています。

これらの提案はそれぞれ、マルチバースdAppロールバックハンドラー、EVMブリッジ構築のためのマルチシグ、クロスチェーンアセット送信規格です。

マルチバースdAppロールバックハンドラーの提案

常に発生するさまざまな分岐(ミニフォーク)について、チェーンやトランザクションの状態を判断するために必要となる情報を提供することにより、エンドユーザーや開発者の一般的なUXを改善することに特化したソリューションです。これは、ユーザーやdApp、ウォレット、取引所、ブロックエクスプローラーなどのプラットフォームが、トランザクションの信頼性を高める要件のために延長された期間を待つことなく、判断や予備の手段を用いてどの程度うまく進行できたかを見極めるために何を使用できるかという情報です。

EVMブリッジ構築のためのマルチシグ提案

dcSparkは、任意のEVMベースのチェーン上でミドルウェアとしてSolidityコントラクトを使うことで、マルチシグネチャトランザクションの作成、共有、署名を調整するソリューションの構築を提案しました。Project Catalyst Fund 6ラウンドで得た資金により、EVMブリッジ構築のためのマルチシグ実装や、これをMilkomedaのブリッジプロトコル(EVMベースのCardanoサイドチェーン)に統合することに成功しました。

クロスチェーンアセット送信規格の提案

Project Catalyst Fund 6で得た資金により、dcSparkはクロスチェーンアセット送信のためのメタデータ規格を設計することができました。このメタデータ規格により、開発者が相互運用しようとする特定のチェーンに関してアセットを定義するため一般化されたフレームワークにおいて、DeFiトークンなどのCardanoネイティブアセットと他のブロックチェーン/エコシステムを相互運用できるようになりました。これらのメタデータ規格の大きな特徴の1つは、クロスチェーンブリッジで想定外の問題が発生した場合の返金プロセスを標準化していることです。

Fund 7

Fund7の多くのプロジェクトは現在も進行中です。dcSparkは、Milkomeda Acceleratorプログラムとして将来性ある5つのWeb3スタートアップを選定し、今後のMilkomeda DAO Hackathonに向けてアプリケーションを公開し、Fracada v2を提供開始しました。以下では、Fund7の重要プロジェクトとしてすでにローンチ済み、または進行中のものをいくつかご紹介します。

Cardano Omnibus — UTXO管理:ウォレットやdAppなどからのトランザクションで生じた入力と出力のUTXOを適切に管理するための最適ソリューションのオープンソースでの研究開発。このソリューションを提供することでユーザーと開発者それぞれのUXや開発コンセプトを改善できます。

分割されたNFT v2(Fracada):2021年9月下旬に(無料で)リリースしたNFT分割化プロトコル(Fracada)のアップグレードです。詳細についてはこちらをご覧ください。

これは、Cardano上のPlutusスクリプトを使ってネイティブアセットの所有権を分割するオープンソースツールです。このアップグレードは正式な監査を実施し、多数のアセットの分割機能を備えています(v1では単一のアセットのみ分割可能でした)。

標準のPlutus投票dApp:Plutusで完全に開発された投票dAppは、Cardanoコミュニティに対してオープンソース提供され、dApp、DAOやCardanoエコシステム内のその他多数のプロジェクトに対する取り組みの管理をサポートします。

また、非EVMブロックチェーンにEVM機能を提供するL2プロトコル、 Milkomedaについても、dcSparkがコアコントリビューターとして実施した提案がいくつか承認されました。

Milkomeda関連の提案への承認

Milkomeda DAO Hackathon: 新しいアイデアやアプローチを用いてMilkomeda上でDAOを構築しようとする個人やグループを対象とする、仮想ハッカソンの開催を企画しています。

Milkomedaドキュメント作成(日、韓、中):ユーザーや開発者向けのMilkomedaオンボーディング用ドキュメントの翻訳(日本語、韓国語、中国語)。MilkomedaやCardanoエコシステムのグローバルでインクルーシブな性格を示す第一歩として役立つでしょう。

Milkomeda Accelerator:成功のための技術知識とビジネスガイダンスを活用し、Milkomeda上での構築を進めようと考える、Cardanoコミュニティ内の個人やグループをサポートすることに特化したアクセラレータープログラム。dcSparkの共同創業者が業界で成功を収めるベンチャーの見本となるトラックレコードを構築しました。彼らは、Cardanoエコシステムの多くの構築者に対しサポートを提供することに、大きな関心を寄せています。

Fund7で承認を得たすべてのプロジェクトの一覧と説明については、こちらをご確認ください。

Fund8以降

dcSparkはProject CatalystのFund8で、現在Cardanoエコシステムが直面する課題を解決するため、新たな提案を行っています。Fund8のすべての提案については、ブログ記事でご紹介しています。

詳細はこちらよりご確認ください。

影響力

dcSparkはまさに今成長を続けています。コミュニティは拡大し、3つの主要なプロジェクトの開発が行われました。40人以上の社員が日々、会社の影響力を最大限発揮すべく業務に取り組んでいます。dcSparkは業界トップクラスのエキスパートや、暗号エコシステムの新たなプレイヤーへのアクセスを提供しようとする企業として、差異化要因を確立してきました。

まもなくdcSparkの創業1周年を迎えるにあたり、以下のアップデートをお伝えできることを嬉しく思います。

  • dcSparkは、非EVMブロックチェーンにEVMのサポートを提供するL2ソリューション、Milkomedaプロトコルに対するコアコントリビューターです。ロードマップの最初の取り組みとして、Cardanoに着手することが決定されました。続いて、AlgorandやSolanaへと展開していきます。
  • CIP-30として知られるdApp Connectorの規格の共同作成者です。CIP-30は、Cardano上のウォレットと安全かつ便利に接続することで、Cardano dAppの成長や連携を開始できるようにします。このメリットにより、現在すべてのユーザーはdApp Connectorの規格を用いて、ウォレットから直接NFTマーケットプレイスやDeFiプラットフォームとやり取りできます。
  • よく知られる「berry Alessandro」による成果など、初期の開発のうちのいくつかは、Cardano Serialization Libraryによって実現したものでした。Cardano Serialization Libraryは、dcSparkの共同創業者兼CTOのSebastian Guillemotが作成したものです。これによりAlonzoエラ以前の最初期やそれ以降の時期に優れた製品が生み出されることとなりました。その一部が、ライトウォレットやNFTマーケットプレイスです。
  • Flint WalletはdcSparkの提供するすぐに使えるウォレットで、これによって相互運用可能な未来に向けて一歩を進めることができます。現在はCardanoで運用され、まもなくMilkomeda、Solana、Ethereum、Urbitなど他のプラットフォームでもローンチされる予定です。

--

--

Caro Rossi
dcSpark日本

Business | Tech | Journalist. Co-founder & CEO @irockcl. I write about innovation, gender, and media. #Feminist @carorossi