【UX Vol.3】〜BlockchainにおけるUXの課題と対策:第三回〜
今回、「オフチェーン」「サイドチェーン」「トークン」におけるUXの課題と対策について見て行きたいと思います。
※下記一覧表の中から特に注目すべき課題を取り上げたいと思います。
目次
- オフチェーン
- サイドチェーン
- トークン
オフチェーン
オフチェーンとは、Blockchain上に記録されないBlockchain外の処理を指します。
ゲームプレイの度にトランザクションが生じるBlockchainゲームでは、「Tx発生時にGasFeeが発生/署名が度々発生」となり、UXの毀損につながります。
そこで、アセット管理をオンチェーン実装、ゲームプレイをオフチェーン実装とするハイブリット構成によりトランザクションを抑えるアプローチが各Blockchainゲームで導入されています。
ただしこのアプローチは、オフチェーン部分を中央集権的なサーバー管理とする為、ゲーム設計においてBlockchainならではの部分と言える非中央集権的な管理のオンチェーン部分をゲーム上でどれだけ実装すべきかバランスが求められます。
これらを踏まえ、実際にオフチェーンを導入したハイブリッド構造のBlockchainゲームとして下記が挙げられます。
Etheremon
モンスターの育成・バトルを行うEtheremonでは、ゲームリリース時にオンチェーン実装していたバトル部分を、オフチェーン実装に変更するアップデートが行われました。
オンチェーン実装であったリリース当初、バトル数が1500回となる日があり、バトル毎に発生する手数料がユーザーにとって大きな負担となっていました。
それがこのアップデートにより、バトル部分がオフチェーン実装され、ユーザーは手数料を意識せずにバトルを楽しむことが可能となりました。
Blockchain Cuties
猫、犬、クマ、トカゲをモチーフとしたキャラクターを育成・バトルするBlockchain Cutiesでは、ユーザーの手数料負担を軽減させる為、バトルやアイテム装着といったアセットの売買・配合以外の部分をオフチェーン実装としています。
これにより、ユーザーは手数料を意識せずにゲームをプレイすることが可能となっています。
コントラクトサーヴァント
コントラクトサーヴァントは、日本企業のアクセルマーク株式会社からリリース予定のトレーディングカードゲームです。(2019年春 リリース予定)
8枚のカードで構成するデッキと多様なステータスによる複雑なバトル実装を実現させる為、アセットの売買・配合以外のバトル部分をオフチェーン実装としています。
これにより、ユーザーは手数料を意識せずにゲームを楽しむことが可能となります。
CryptoAssault
マルチプレイヤー型ストラテジーゲームのCryptoAssaultでは、マルチプレイヤーによるスムーズな移動と攻撃を実現させる為、ホワイトペーパーに記載がある様に、アセットの管理以外は全てオフチェーン実装としています。
2019年にベータ版がリリース予定で、現在デモ動画を見ることが出来ます。
この様なマルチプレイヤー型の複雑なゲームであっても、オンチェーンとオフチェーンのハイブリッド構造により、ユーザーは手数料を意識せずスムーズなゲームプレイを可能とします。
サイドチェーン
サイドチェーンとは、BlockchainやEthereumといったメインのチェーンでの処理を連携した別のチェーンに委譲し高速処理を実行するものです。
これにより、メインチェーンのセキュリティを担保しつつ、サイドチェーン上で独自の仕様でスケーラブルな実装を可能とします。
サイドチェーンは、2014年にBlockstream 社から発表された仕様で、現在BitcoinではLiquid/Rootstock/Drivechain、EthereumではLoom Network/POA Network/BOLTといった様々なサイドチェーンが提案されています。
これらのサイドチェーンをBlockchainゲームに用いることで、アセットの価値をメインチェーンで担保しつつ、複雑なゲーム処理をサイドチェーンで実装することが出来、ゲームとしてのUXを毀損せずにユーザーにゲームを提供することが可能となります。
下記が実際にサイドチェーンを導入したBlockchainゲームになります。
Zombie Battleground
サイドチェーンプロダクトのLoom Networkが提供するトレーディングカードゲームのZombie Battlegroundでは、自社で展開するサイドチェーンが実装されています。
Loom Networkでは3つのサイドチェーン(PlasmaChain/GameChain/SocialChain)が展開され、Zombie Battlegroundではモバイルゲームに最適化されたGameChainが実装されています。
実際にこのアルファ版がリリースされた時、24時間で60,000ブロック以上の生成に成功し、「トランザクションの詰まり」や「Tx発生時にGasFeeが発生/署名が度々発生」を抑えたゲームプレイを実現させました。
その他、従来のゲーム開発者がBlockchainゲームの開発を始められやすいようにLoom SDKも提供され、既にCryptoWars、Neon District、Axie Infinity、MosslandといったいくつかのBlockchainゲームがこのLoom SDKの利用を予定しています。
Everdragons
ドラゴンの育成・バトルを行うEverdragonsでは、サイドチェーンプロダクトのPOA Networkが実装されています。
POA Networkの特徴として、「ブロック生成タイムが5秒」「手数料が安価」という点が挙げられます。
Everdragonsは、マルチプレイヤーによるチーム戦や勝敗予測機能など、多様なゲーム要素を含んでいる為、アセット売買以外のバトル部分などはサイドチェーン実装とし、高速で安価なゲームプレイを実現させています。
CryptoDerby
CryptoDerbyは、日本企業の株式会社プラチナエッグが提供する競走馬育成ゲームです。
フル3Dの臨場感あるレースを提供する為、台湾発のサイドチェーンプロダクトであるBOLTを利用しています。
BOLTの特徴として「1秒間に大量のトランザクションを処理」「手数料が無料」「Ethereum、EOS、NEOといった多様なBlockchainとの互換性」が挙げられ、このサイドチェーンを用いることで臨場感のあるレースを実現させています。
トークン
Blockchainゲームのアセット購入にはETHが用いられる場合が多く、これまでにETHを保有したことのないユーザーにとって、法定通貨と比べてボラティリティリスクのあるETHの保有はハードルとなり得ます。
こうした課題に対して、下記プロダクトを用いることで「クレジットカードでの直接アセット購入」や、「法定通貨でstablecoinを取得してアセット購入」といったことを実現させています。
Nifty Gateway
Nifty Gatewayというサービスでは、デジタルアセットのクレジット購入をサポートするサービスを提供しています。例えば、Gods Unchainedでは、このNifty Gatewayが対応しており、クレジットカードによるアセット購入が可能となっています。
Nifty Gatewayでは、Gods Unchainedの他にもマーケットプレイスのOpenSeaとも連携しており、OpenSea上で販売されているアセットであれば全てクレジットカード購入が可能となります。
OpenSea上の該当アセットのページURLを下記に入力すると、決済ウィンドウが立ち上がり購入手続きが行えます。
Wyre
Wyreでは、KYC確認が完了したアカウントに対し、法定通貨による暗号通貨の取得サービスを提供しています。
取得可能な通貨として、ETHやBTCの他にstablecoinのDaiがあります。
DecentralandではDaiを使ってLANDオーションへの参加が可能となっており、WyreでDaiを購入すれば、ボラティリティの高い仮想通貨を保有することなくアセット購入が可能となります。
このように、Daiのようなstablecoinでの支払いを受け付けているサービスであれば、ボラティリティリスクのあるETHを保有することなく、アセット購入が可能となります。
ここまで、数回にわたりBlockchainのUX課題と対策について見てきました。次回から、データで見るBlockchainゲームの現状をテーマに見て行きたいと思います。
Reference
- https://cryptoassault.io/CryptoAssaultWhitepaperV11.pdf
- https://github.com/drivechain-project/diff
- https://blockstream.com/
- https://github.com/poanetwork/wiki/wiki/POA-Network-Whitepaper
- https://infinitechain.io/doc/BOLT-Whitepaper-V1.1_EN.pdf
- https://decentraland.org/blog/announcements/decentraland-accepts-dai-mkr-in-land-auction