日曜日の午後1時。私は「古民家食堂 ごんばち」の入り口の前に立っていた。後ろには「ごはんつぶ。」の仲間がいる。こうしてここを訪れるのは、8回目。今日はどんな出会いが待っているのだろうか。期待に胸をふくらませつつ、慣れ親しんだ暖簾をくぐる。
素敵な女の子になりたい。
その想いからこのプロジェクトを考えはじめたのはちょうど1年ほど前のことである。
わたしにとっての「いい暮らし」のルールを発見することで理想の自分に近づこうというこのプロジェクトは、続けられないという困難を乗り越えてようやく動き出したように思えた。しかし、7月号の記事にも書いたように、わたしは自分のやりやすい範囲でしか「いい暮らし」に挑戦していないということに気づき、このプロジェクトの目的とそのために必要なことをもう一度考えることにした。
−なぜ めぐり逢うのかを 私たちは何も知らない−
2月のとある昼下がり。外の寒さを忘れてしまうほどあたたかな店内で、私は仲間と共にうたをうたっていた。目の前には、先ほど出会ったばかりの名も知らぬ人々。ざっと15名くらいだろうか。入り口付近にひとりで座っている綺麗な白髪のおばさま、大きなレンズの付いたカメラで私たちを撮っている学生風の男性、ごはんを食べながらやんちゃな男の子たちをあやす若いお母さん2人組…。それぞれ様々な表情で、私たちのうたを聴いている。この店の店主である古谷さんと奥さんのさちこさんも、奥の厨房から出てきてこちらを見つめている。
ライフスタイル本が売れるのには、理由があると思う。
Booksという、書籍の検索サイトでタイトルに「暮らし」が含まれる書籍を検索したところ、2010年から毎年増え続け、2014年には203件、2015年には230件、2016年には243件が出版されているということがわかった。タイトルやサブタイトルに「暮らし」というキーワードが含まれていないだけで、暮らしについて考えている本はもっと多いだろう。
昨年12月、私は仲間と共に最後のライブを終えた。1年間にわたる12回のフィールドワークで、私たち「ごはんつぶ」は51曲を、のべ248人に届けた。
わたしは自分のことが好きだけれど、自分の生活にはうんざりしている。髪を乾かさずに寝てしまった次の朝、鏡に映る姿に絶望し、お昼ごはんを作るのが面倒なときはカップラーメンで済ませてしまう。これといったこだわりがなく、自分に似合う色も知らない。
本当は早く起きて散歩して、しっかりと朝ごはんを食べて、育てたトマトを収穫したり、気まぐれで水彩画を描いたりしたい。バイトで帰りが遅くなった日も、ゆっくりお風呂でリラックスしたい。きちんとパジャマを着て、自分に合ったまくらで寝…
私のきょうだい
小さい頃の写真を並べてみると、私が1人で写っている写真はほとんどない。隣には、いつも姉の存在があった。
家族のことは、案外よく知らない。 このプロジェクトは、近いようでいてなかなかあえてコミュニケーションをとることのない自分の家族について捉えてみようというおもいから始まった。
「家族」は一番身近な存在である。しかしだからこそ、家族のコミュニケーションのためにわざわざ時間を割くのが後回しになることは往々にしてあるのではないか。
我が家は父、母、3歳年下の弟、そして私の4人家族だ。
キャッチボールは毎回状況が違う。日によって2人のテンションも、会話の内容も、投げるペースも違う。
私がもともとこのプロジェクトでやりたかったことは、キャッチボールを通して見える弟の変化を記録することである。つまり、「インタビュー手法としての」キャッチボールである。これは、たまったデータを分析しなくては何も見えてこない。今回はビデオ分析をして少しずつ見えてきたことを紹介する。