もっと、パクチーを増やさなければならない。このあいだ、ちょっぴりのパクチー・ソースを作ってみんなで食べたとき、そう強く感じた。たしかに、種を蒔いては枯らしを繰り返していた頃を思えば、ここまで来れたのは感動的だ。しかし人は、欲深い生きものである。自分たちのパクチーを人に振る舞い、喜びを感じたことで「もっとたくさんの人に、私たちのパクチーを食べてもらいたい…」というさらなる欲求がふつふつと湧いてきたのであった。
研究室のテラスを中心に展開してきた私たちのパクチー栽培だが、収穫量を増やすため、それぞれの家庭内でも栽培を始めることにした。さやかは自宅のベランダにミニプランターを設置したというので、私は違う方法を試すことにした。
近年、私たちのように家庭菜園を始める人が増えているらしい。「ガーデニング」は、庭やベランダなどの小さなスペースで花や緑を育て、「見て」楽しむことを主とするのに対して、「家庭菜園」は野菜を育て、収穫して「味わう」ことが目的だ。株式会社矢野経済研究所による家庭菜園向け野菜苗・果樹苗市場に関する調査報告を見ると、余暇を楽しむシニア世…
今年も残りあと10日。2週間前に誕生したベランダパクチーは、ちいっとも芽を出さない。年を越す前に、種を蒔き直したいところだ…。しかし研究室のプランターパクチーはおかげさまで、すくすくと元気だ。パクチーをうまく育てられなかった夏は、プランターを見るたびに苦しかった。でも今は、見るとなぜだかほっとする。師走の忙しない心持ちで研究室に向かうたび、パクチーだけはいつもどおりそこにあるということが、私を落ち着かせてくれる。
我が家の窓辺のパクチーが、思いのほか順調に成長している。この栽培セットの特殊な土の威力もあるだろうが、日当たりの具合や水やりの加減、室内温度など、諸々の条件も良かったのだと思う。自分が気にかけたり手間をかけたりしている対象が成長する姿を見るのは、純粋に嬉しくて楽しい。この調子で育ってくれれば、新年に、師匠や仲間たちと味わうことができそうだ。