大学の授業の帰り道の電車内。外は真っ暗で、向かい側の窓にはガラガラの電車に揺られながら一人ぽつりと座っている自分が映る。ポケットからスマホを取り出し、情報とコンテンツの宝庫である複数のSNSアプリをはしごする。一通り見終わって、2週目に入るか読みかけていた本の続きを読むか迷った時にふと…
祖母が死んだ。
木曜日の早朝、母にたたき起こされた。まだ寝れるはずなのに、とぶうたれて目をこする私に、母は告げた。
「大野のおばあちゃんが亡くなったの」
一気に目が覚めた。どうして、という疑問と、ついに、という思いがこんがらがって、私は何も言えなかった。父が電話で伯母と話している声が聞こえる。大野のおばあちゃんは餅を喉に詰まらせて意識を失い、そのまま帰らぬ人となったらしい。通夜は明日、告別式は明後日だという。心の整理ができないまま、すべての予定をキャンセルして東京駅から新…