私は県をまたいで大学へと通っている。電車とバスを乗り継ぎ大学へと向かうのだが、その移動時間は1時間半を優に超える。大学へ通い始めて丸3年がもうすぐ経とうとしているが、この1時間半という時間の中で私の振る舞いは変わり続けている。
未だに不思議な気持ちになる。上京組として恥ずかしながら、約1時間ほどでかつて憧れていた東京へ行けるからだ。湘南新宿ラインで「次は、〇〇駅」と何度も車内アナウンスを聞くたび、私はたしかに東京へ向かっていると実感する。電車のスピードに身を委ねて、ぼーっと立っていることもあれば、運がよければ座れる。今日はず…
太郎はいつもどおり、優先席の前に立つ。
太郎は、優先席には基本的に座らない。どんなに混んでいても、座らないと決めていた。だって、優先席に座るなんて格好悪いから。元カノにそう言われたことがきっかけで座らなくなった。
東京都の品川から、神奈川県の川崎市、横浜市を超えて、三浦半島の先端まで続く京浜急行電鉄(以下、京急線)。赤くて少しレトロチックな車体と「ファソラシドレミ〜」と奏でる発車音が特徴的な電車だ。私が生まれた時から住んでいる金沢文庫には、この京急線しか通っていないので、どこへ出かけるにもこの電車に乗らないと始まらない。中学生になり憧れていた電車通学をし始めてから、大学4年生になった現在まで、京急線には毎日のようにお世話になってきた。