いまでも忘れられない風景がある。もうずいぶん前のことになるが、アメリカで大学院に通っていたころの話だ。ランチタイムになると、キャンパスのすぐ前の通りに、移動販売のトラックが何台も並んだ。ピザやサンドイッチはもちろん、タコス、チャイニーズ、ケバブなど、メニューはとても豊富だった。車内で大人が二人ほど動き回れるくらいの大きなトラックで、立派なキッチンが組み込まれているものが多かったように思う。
ずっと雨の日が続いていたが、また夏が戻ってきた。予報では、猛暑日。そのせいだろうか、〈現場〉には誰もいなかった。ちょうど、昼休みの時分だったからだろうか。
みんなでヤスリがけをしてから、およそ一か月。すでにSBCセンターは、姿を消していた。あっという間に景色が変わってしまった。がらんとしたキャンパスで、コンクリートの土台だけが、太陽に照らされている。事情を知らない人には、建設中なのか解体中なのか、見分けがつかないかもしれない。この先は土台もなくなり、やがては芝生で…
数年前、学部のカリキュラム改訂にかかわった。現行の学部のカリキュラムは、40回くらいにおよぶ「新カリキュラム検討委員会」の会議を経て原案がつくられ、承認されたものだ。あるとき、同僚の(そして検討委員会メンバーの)内藤さんが、カリキュラムについて考えるために、〈OS(オペレーティングシステム)〉か〈アプリ(アプリケーション)〉かというアナロジーで話をしたことがある。というのも、何度も委員会を開いて議論しているうちに、「そもそもカリキュラム改訂とは、どういう作業なのか」という、基本的な問いに立ち戻る必要があると思われた…
これまでに何度も引っ越しをしてきたので、がらんとした部屋は見慣れているはずだった。
この夏、センターが解体されるという。もちろん急に決まった話ではなく、もともと2年間の「仮設」ということだった。だから、その時が訪れたというだけだ。学期中のような往来があっては工事ができないので、夏休みになるのを待ってから解体がはじまる。いまは、まさに学期末で、おそらくはふだんよりも学生たちの姿を多く見かける時期だ。あと一週間もすれば、こんどはキャンパスはとても静かになって、そのなかで解体工事がすす…
ぼくたちは、コミュニケーションせずにはいられない。そして、コミュニケーションへの欲求は、場づくりについて考えることと直結している。というのも、ぼくたちのコミュニケーションは、かならず〈いつか・どこか〉でおこなわれるからだ。どこで、誰と一緒に過ごしたいのか。どのような雰囲気だと、居心地のよさを実感できるのか。大切なひとときについて考えることをとおして、ぼくたちの意識は、身の回りのさまざまなモノや生活のリズムなど、じぶんたちが「暮らしていること」(少し大げさに言…
ベンチをつくった。「つくる」といっても、ツーバイフォーの木材を買ってくれば、簡単に組み立てることのできるキットだ。ちょうど石川さんがいたので声をかけて、学生たちとともにおしゃべりをしながら、1時間ほどでベンチを組み立てた。背もたれを回転させれば、テーブルのように使うこともできる。とくに表面を整えたり塗装したりせず、そのままの状態だ。なんとも無愛想な感じだが、これぞツーバイフォーという雰囲気で、多少なりとも乱暴に扱われることがあってもだいじょうぶだろう。時間が経てば、もっと素材感が際立ってくるはずだ。
あっという間に、6月になった。新年度から(実際には、年度末のケジメがついていないままのような気もするが)、慌ただしく過ごしてきた。ゼミについては、この春からメンバーが大幅に…
「滞在型キャンパス」について考え、形にしてゆくという実践は、なかなか難しい。人は、じぶんの気になるところばかりを見ようとする。そして、(あたりまえのことだが)やはり目に見えるところが、話題や争点になりがちだ。だから、ちょっと挑発的なポスターが貼られると、まわりは過度に反応する。議論ばかりしていないで、とにかく手を動かそうという気風が、丁寧にことばにすることを疎かにし、一連の実践が、余計にわかりにくくなってしまうのかもしれない。…