ヨーロッパでは「パリンプセスト」と表現するわけだね。上書きにより痕跡を残しながら二重化、多重化していくプロセスの寓意として。
中西夏之『大括弧 ── 緩やかにみつめるためにいつまでも佇む、装置』(筑摩書房、1989年)
君が僕の前にいるのはもう一人の君がいるからなのだ。君の花子がこよなく可愛いのも別のところの同じ花子がいてやはり可愛くしているからなのだ。この地上が在るのは同じもう一つの地上があるからなのだ。「それなら君も二人いるのかね」と君はいったが、この地上にある総てのモノや人は仮想の地上にもあるが、僕だけは一人なのだよ。僕はこの地上の際にいて、接するもう一方の地上に片方の足をかけている。あちらの足をこちらに移せばこちらにいる、こちらをあちらに移せばあちらにいるというものでもない。なぜなら…
この春、台湾の主要都市を詳細に記録したアトラスが刊行されています。火災保険特殊地図の復刻集成です。
火災保険特殊地図は東京のものがよく知られており、この10年で都市史研究の基本資料として広く使われるようになった。建物の構造・材料、用途、塀の種類、道路の幅員、消火栓の位置などなどが表示されており、保険の料率を決める…