僕はいったい何十年、おなじ景色を見つづけているのだろうか。
夢うつつのなかそんなことを思っていた。日が昇り視界が明るくなると、景色のすべてが真っ白なことに気がつく。さっきまでの暗闇が、不思議な静寂をたたえていたのはこのせいか。
こんな日は、誰よりも早くヤスノリが外に出ることを知っている。隣の家の玄関から、眠そうな顔をして。より事態が深刻なときは、タミもエリコも現れる。少し前まではヤスオがこの家の玄関から、同じ道具を持って現れた気がするが。それよりもっと前は…
It was one rare morning when my mother sent us a message in our family’s LINE group:
友達と電話していた。
「あさって、しんゆりに帰るよ。」この言葉を発した自分に、違和感を感じたのは今年に入ってからのことだった。生まれ育った埼玉県を去り、縁もゆかりもないこの街、新百合ヶ丘で一人暮らしはじめてから1年記念日を迎えた。これといって特徴のある街でもなく、大学の最寄駅までは30分弱かかる微妙すぎるこの街に住もうと決意した理由はいたって単純だった。ただ都会と大学の中間地点に住みたかった。それだけだ。そんな私の一人暮らしは、きっと未だに許されていない。さっきのはちょっと嘘で、一人暮らしを始めて、ではなく家出娘になって1年記念日といったほうが正しかったかもしれない。