045|202007|特集:自炊のように作る、賄いのように作る。ビルドにコミットする建築家たちへの基礎調査

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建築討論
Published in
Jul 2, 2020

Build like self cooking, Build like staff meals. Survey of architects committed to build.

回答者

荒木源希家成俊勝岡啓輔佐藤研吾長坂常中田裕一山口純和田寛司

特集趣旨

料理には「自炊」「賄い」という言葉があります。日常生活の延長のなかで自分で料理を作る「自炊」。プロフェッショナルの料理人が食事を自らのために作る「賄い」。そこには限られた身の回りの物で取り計らうクリエイションがあります。これを建築に置き換えてみると、DIYやセルフビルドと言い換えられるでしょう。設計者が設計図面というレシピを飛び越えて施工を行うことを「自炊」「賄い」のような当たり前の行為として捉えてみることから本特集を始めてみます。

タイムラインに建築家がDIYを行う姿が流れてくると興味深く眺めてしまいます。SNS以前の建築メディアには現れなかった風景です。建築家が手を動かす対象というのは図面やスケッチ、模型のような抽象的な代替表象物であって、現物は職人が作るものという設計施工分離の固定観念があるからかもしれません。設計施工分離とデザインビルドは長年にわたって議論がなされています★1。もちろん、その中でも様々な建築家がセルフビルドを行ってきたことも事実です。しかしながら建築家が自ら作る行為は、手元と現場の中に埋もれ、何が起きているのかは言語化・可視化されているとは言い難いでしょう★2。「血と汗と涙の結晶」のような根性論に施工を閉じ込めておきたい設計者の思い込みもあるかもしれません。

とりわけローコストの現場で見受けられる行為ではありますが、限られた予算、材料、施工方法の中で「賄う」ことから立ち上がる建築の可能性はどのようなものでしょうか?必ず彼らの手元からは設計行為や建築へのフィードバックやループが生まれているに違いありません。あるいは特異性はなく、建築の純粋な作られ方が垣間見られるのかもしれません。さらに1975年を境に年間約100~200店のペースで増え続けてきたホームセンター★3や、90年代から始まった「Amazon」「モノタロウ」のようなEコマースによる流通の変化★4は、私たちと物とのネットワークを大きく変えています。

手元から個へ深く潜りながら意匠・工法にフィードバックするもの、あるいは開かれた集団と繋がりながら生産や工法を変えていくものなど、ひとえにビルドにコミットするとしても、多様性があるように見受けられます。ビルドにコミットする建築家たちへ、幾つかの問いを投げかけてみます。

笠置秀紀(建築討論委員会)

設問

Q.1|自分で作った作品画像をご紹介ください。(300文字以内)

Q.2|上記の際に描いた図面(画像)をご提供ください。
普段の図面と違うところ、例えば増えた要素、減った要素は何でしょうか?(300文字程度)

Q.3|作るための道具・設備の画像をご提供ください。
その道具によって生まれる制限や表出するものは?また素材との関係性もあればお答えくだ
さい。(300文字程度)

Q.4|自分で作る上で、流通、材料、既存建築物、立地、施工者、施主など、制作を取り巻く要素との関係性、あるいはその変容はどのようなものでしょうか?(1000字程度)

Q.5|そこで得たフィードバックやループはどのようなものですか?
これまでの建築や設計を変えるような可能性をお答えください。(1000字程度)

Q.6|自分で作るにあたって不確実性をどのように捉えますか?
例えば問題が発生した際の解決策で特徴的なことは何ですか?(1000字程度)

写真:長坂常/スキーマ建築計画

★1:例えば本会誌『建築雑誌2011–4月号 特集=日本のデザイン×ビルド』がある。

★2:セルフビルドを意識的に言語化し活動している建築家の一人に石山修武があげられる。

★3:増加数は近年鈍化しているものの全国で4800店舗にのぼる。一般社団法人 日本DIY・ホームセンター協会「年間総売上高とホームセンター数の推移(推計値)」https://www.diy.or.jp/i-information/association/jigyo/transition.html

★4:「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」(平成31年5月)経済産業省商務情報政策局情報経済課

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建築討論委員会(けんちくとうろん・いいんかい)/『建築討論』誌の編者・著者として時々登場します。また本サイトにインポートされた過去記事(no.007〜014, 2016-2017)は便宜上本委員会が投稿した形をとり、実際の著者名は各記事のサブタイトル欄等に明記しました。