ブロックチェーンゲーム市場レポート:NFT取引(2019年6月)

Hiroyuki Narita
Metaps Blockchain JP
13 min readJul 18, 2019

前回に続き、6月末時点のブロックチェーンゲーム市場(NFTのセカンダリー取引)について各種データをもとに考察していきたいと思います。

なお、本レポートでは、下記抽出対象に基づくブロックチェーンのトランザクションデータを参照しております。(参照データ:EtherscanBigQuery

*抽出条件*

  • NFTのユーザー間取引により発生(OpenSeaAuctionityなどのマーケットプレイス及びCryptoKittiesなどのゲーム内マーケットのトランザクションを対象とする)
  • 独自トークンによる取引はETH・USD換算にて算出(MANAなど)
  • Decentraland を除く取引を算出
  • Ethereum上で発生
  • 2018年6月1日〜2019年6月30日に発生

目次

  • セカンダリーマーケット取引高
  • タイトル別比較
  • ユーザー動向
  • 総括

セカンダリーマーケット取引高

取引高推移

【全期間の月次推移(2018年6月1日〜2019年6月30日)】

−ETH建−

−USD建−

5月に引き続き6月もETH建で下落傾向となり、USD建は3月以降横ばいの推移となりました。

さらに6月の日次推移が下記となります。

【6月の日次推移(2019年6月1日〜2019年6月30日)】

−ETH建−

−USD建−

日次推移では多少の上下はするもののETH建・USD建 共に横ばいの推移となりました。

平均取引高

【取引あたりの平均取引高(ETH・USD)】

5月に引き続き取引あたりの平均取引高はETH建で下落、USD建で上昇なりました。USD建については2018年12月以降ずっと上昇傾向にあるのがわかります。

【ユーザーあたりの平均取引高(ETH・USD)】

一方でユーザーあたりの平均取引高で見るとETH建・USD建 共に5月と比較して下落となりました。

【取引高上位10ユーザーが全取引高に占める割合】

大口取引ユーザーの全体に占める割合は5月と6月でほぼ変化は見られませんでした。

そのため、先月までは取引単価の下落要因として大口取引ユーザーの減少があげられましたが、6月については別の要因に起因していると考えられます。

取引額ランキング

【取引額ランキング−前月比較−(TOP 15)】

先月との比較で見ると6月は20 ETHを超える取引は無く、全体的に取引単価の低い取引が多かったことがわかります。

こうした全体的な取引単価の下落により、先ほど挙げた平均取引高の下落につながったと言えます。

また、タイトル別に見ると5月と6月ではラインナップが大きく入れ替わっており、NFTセカンダリー市場のトレンド変化の激しさが見て取れます。

タイトル別比較

*OpenSea、Auctionityなどのマーケットプレイス上で発生したタイトル別の取引についても、各タイトル取引高に仕分けして算出しております。

タイトル別 全体取引高

【全期間の月次推移(2018年6月1日〜2019年6月30日)】

−ETH建−

−USD建−

タイトル別に見ていくとETH建・USD建 共に6月は多くのタイトルで取引高の下落が見られました。

そんな中、「Blockchain Cuties」「CryptoSpaceCommanders(以降 CSCNFT またはCSCNFT(CryptoSpaceCommanders)と表記)」はETH建・USD建共に取引高の増加を見せました。

【2タイトルの5月・6月取引高推移】

急激な伸びとまでは言えないまでも2タイトル共に5月と比較して順調な推移であることがわかります。

【Blockchain Cuties のマーケットプレイス別 取引高推移】

Blockchain Cutiesについては、先月のレポートで取り上げた内容と同様にSpiderDEX上での取引が活発に行われ、5月に引き続き取引高が躍進に繋がりました。(SpiderDEXの概要については先月のレポートを参照ください。)

CSCNFT(CryptoSpaceCommanders)については、これまで取り上げてきたタイトルとは異なり、あまり目立った取引高推移を見せていませんでしたが、今月に入り高騰を見せました。

https://www.csc-game.com/

CSCNFTは宇宙を舞台にしたシミュレーション・アクションゲームで、2018年4月のプレセール実施から1年になるブロックチェーンゲームです。

ゲーム内容としては、先月取り上げたPLANET(0xUniverse)と類似しており、宇宙船を飛ばして資源を集め、その資源でさらに宇宙船を製造し楽しむゲームとなっています。PLANETと異なる点はMMO要素が入っている点で、自分で製造した宇宙船で複数の参加プレイヤーとバトルが楽しめるゲームとなっています。

【CSCNFT 取引高推移】

これまでの取引高推移を見ていくと、多少の上下はあるものの全体を通じて右肩上がりの推移となっているのがわかります。

【MAU( Monthly Active User)推移】

また、月次のアクティブユーザー推移を見ると、毎月一定のユーザー取引されているのがわかります。

なお、6月は多数のリリースが重なり、6月に関しては特に急激なアクティブユーザーの増加につながったと考えられます。

また、以前にブロガーのイケハヤ氏とのコラボ宇宙船がオークション販売されたりと多様なプロモーションを行っており、ゲームコンテンツの面白さに加え、ユーザー獲得に向けた様々な取り組みが、取引高・MAUの右肩上がりの推移につながっていると考えられます。

タイトル別 累計取引高 TOP 15

【全期間の累計取引高(2018年6月1日〜2019年6月30日)】

−ETH建−

−USD建−

先月のレポートと比較して累計取引高順位に大きな変化があったタイトルにBlockchainCutieが上げられ、ETH建で10位から8位・USD建で10位から7位へと順位を上げました。

【直近3ヶ月毎の取引高比較】

−ETH建−

−USD建−

3ヶ月毎の取引高を比較してみると、ETH建・USD建ともにMCH、CryptoKitties以外のタイトルは順位変動が激しいことがわかります。

また、MCH・CryptoKittiesに関しても順位変動はないものの、以前と比べて取引高を大きく落としており、取引高の低迷は全タイトルに共通していることがわかります。

タイトル別 平均取引高(取引高TOP3タイトルを比較)

【取引あたりの平均取引高】

−ETH建−

−USD建−

5月に引き続きETH建・USD建の平均取引高はどのタイトルも下落、または横ばいの推移となっています。

【ユーザーあたりの平均取引高】

−ETH建−

−USD建−

MCH・MLBについては5月に引き続きETH建・USD建 共に下落となりましたが、CryptoKittiesに関してのみETH建・USD建 共に若干ではありますが上昇に転じました。

ユーザー動向

購入ユーザー数の推移

【MAU(monthly active user)】

【New user】

MAU、New user共に先月比で若干の減少となりました。こうした低調なユーザー流入が全体取引高を押し下げた1つの要因とも考えられます。

取引高TOP10タイトルのHolder状況

下記事由により、ここで示す数値はあくまで参考値としていただけたら思います。

*ここではアセットを保有する1アドレスを1Holderとして算出しています。そのため、1ユーザーが複数アドレスを保有する場合であっても1アドレスをもとに1Holderとして算出しております。

*MCHの様にゲームプレイをオフチェーン で実行するために、特定のアドレスにアセットが集約されている場合、累計取引高とHolder数のタイトル順位に大きく異なる場合があります。

Gods Unchianedの様にアセットがロックアップされてセカンダリー取引ができないタイトルの場合、累計取引高とHolder数のタイトル順位が大きく異なる場合があります。

【タイトル別 Holder数−前月比較−】

5月時点と比較して6月に大きく順位を上げたタイトルにAxie infinity(以降 Axie と表記)がありました。

Axie は直近1ヶ月で多くのリリースがありました。

その他、ゲーム内マーケットの売買機能の拡充などいくつかのリリース内容が新規ユーザーの獲得につながったのではないかと考えられます。

https://land.axieinfinity.com/marketplace

なお、AxieのLandマーケットプレイスはLoom Network上で展開しており、下記のようにデイリーで12.42 ETH、ウィークリーで60.22 ETHといった、今回集計したEthereum以外にも取引が発生しています。

https://dappradar.com/loom/6/axie-infinity

【複数タイトル同時保有状況 −前月比較−】

5月時点と同様に、1つのタイトルのみを保有するユーザーが94.3%と大半を占めている状態と言えます。

【保有タイトルの組合せ −前月比較−(TOP 15)】

こちらも5月時点と同様に大きな変化はなく、複数タイトルの保有者の多くがCryptoKittiesとの組み合わせでアセット保有していることがわかります。

総括

先月に引き続きETH建の取引高は下落、USD建では横ばいといった推移となりました。6月は特にETH価格(USD換算)が20% 上昇したこともあり、両建ての推移に大きな乖離が生じたと考えられます。(あくまで先月のレポートでも言及した、アセット購入時の価値見積においてはUSD建が主に用いられているのでないかと言う仮説に基づく推測になります。)

タイトル別に見ていくと、先月も取り上げた「Blockchain Cuties」、そして新たに「CSCNFT(CryptoSpaceCommanders)」がETH建・USD建 共に順調な推移を見せました。

この2つのタイトルはリリースから1年以上運営されていおり、充実したゲームコンテンツであることに加え、新規マーケットプレイスへのリスティングによる販路拡大や、著名ブロガーや人気コンテンツとのコラボなど多様なプロモーションを駆使し、リリース以降も着実に成長をしてきたタイトルと言えます。

毎月、次々とリリースされる新タイトルとは別に、こうした長期的に成長をし続けている老舗のタイトルにも注目し、その動向について今後も考察を交えたレポートをお届けしていきたいと思います。

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