少なくとも、わたしは。
「時間の軸が揺れた。」
村上春樹の小説『神の子どもたちはみな踊る』に収録されている短編「蜂蜜パイ」に出てくる一節だ。それも「窓辺のカーテンが風にそよぐように」と綴られている。主人公があることをきっかけに、ふと、じぶんが若かった頃に引き戻され、当時と同じ感覚になるというのが、この一節に至るまでの文脈である。
果たして、「時間の軸が揺れる」とはどういう感覚だろうか。わたしは今まで、「時間の軸が揺れる」といった経験を味わったことがあっただろうか。この表現を、ふとした瞬間にすっと過去に引き戻されることであると捉えるな…