NIHSS-2 眼球運動
共同偏視は脳卒中患者さんで多く見られる症状です
眼球運動(共同運動)の起こり方
PPRFという左右一対の脳幹(橋)にある神経核が重要な働きをします。これは同側の目を外側に、対側の目を内側に向け、両目とも同じ対側に向かせる調整役を担っています。
つまり右PPRFは両目を右側、左PPRFは左側に向かせる役割を担っています。
眼球運動は前頭前野や後頭葉からの命令が対側のPPRFに伝わり起こります。
さて、突然ですが右手を動かしてみましょう。自然に右手に視線が動いたでしょう。
右手を動かす信号は左大脳運動野の皮質から発生し、同時に前方の眼球の共同運動の領域にも信号が伝わります。この興奮が対側の右PPRFに伝わると、右PPRFは右目を外転させる動き、同時に左目を内転させる動きを引き起こし、結果として両方の目で右側を見たのです。
あなたの頭の中では 左大脳 >>> 右PPRF >>>右を向く という事が自然と起きていました。
脳卒中の際に起こっていること
さて、脳卒中の患者さんではどのようなことが起こっているでしょうか。
左側の脳のダメージで 左大脳 ~ 右PPRFの経路がダメージを受けると、
右PPRFへの信号が減少するので、相対的に 右PPRF < 左PPRF となります。左PPRFの信号が強くなり自然と左側を向きます。つまり病側を向くのです。これが共同偏視の正体です。
おまけ: 痙攣の際に起こっていること
痙攣発作の際には大脳半球の興奮性が高まります。左大脳半球でけいれん発作が起きると、右PPRFへの信号が強まります。
右PPRF > 左PPRFとなり右側を向くようになるのです。
簡単に眼球運動、共同偏視の仕組みを解説してみました。興味のある方はさらに、MLFや動眼神経核、さらに眼球運動に関わる神経、筋肉についても勉強してみてくださいね。