NIHSS-11 消去現象と注意障害 その4

Kei Nomura
4 min readJul 20, 2016

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注意障害の種類と診察方法

注意障害を1. 視覚、空間、2. 触覚、3. 聴覚、4. 自己身体に分けて説明します。

実際のNIHSSを取る中でどのように発見されやすいかみていきましょう。

まずは注意障害の重度、軽度について区別しましょう

重度: 障害側は感覚の認知ができない

軽度: 障害側は感覚の認知はできるが、両側同時刺激で認知できない。誤った感覚、妄想を持つ

それでは一つづつみていきます。

1. 視覚、空間の注意障害

「半側空間無視」は「視覚の注意障害」が原因と考える研究者も多く、その違いを区別するには専門的な知識と検査が必要です。

診察上は「半側空間無視」と「視覚の注意障害」はほぼ同等と考えても良いでしょう。

NIHSS診察で気がつく症状

I-意識: 右側からの呼びかけにしか反応しない => 2点

II-眼球運動: 指が正中から左に追えない。 => 注意障害の可能性がある

※ この場合注意が必要な病態として「半盲」と「共同偏視」があります。

半盲: 半盲と無視の区別は難しいが、純粋な半盲が眼球運動に影響しないのに対し、注意障害はその範囲に制限が出ることがあります。

共同偏視: 麻痺と眼球の向きを併せて判断する必要があります。無視であればある程度の眼球運動は可能なことが多いです。

III-視野障害: 左側が見えない。

半盲との区別が難しいですが、純粋な半盲の場合には障害側への注意は保たれているため、注意をうながせば視野障害側にも注意を向けることができます。消去現象はこの項目で検査します。

XI-注意障害: 線分二等分テストを行うと半側空間無視がはっきりと診断できます。

2. 触覚の注意障害

感覚低下と区別しにくく、初対面の身体所見だけではわからないでしょう。軽度の場合は消去現象で判定できます。

3. 聴覚の注意障害

難聴との区別が難しく、詳細な検査なしに初対面の身体所見だけではまずわかりません。軽度の場合は唯一消去現象で判定できます。

4. 自己身体の注意障害

半側性身体失認と同じ意味です。自分の身体のイメージに障害があります。

半側性身体失認には「意識される」(認知出来る)ものと「意識されない」(認知できない)ものに区別されます。

意識される半身性身体失認(軽度)

自分の半身について誤った感覚や妄想(喪失感、変形感、異物感)などを持つ状態。(自分の半身、手足だという感覚は持っている)

意識されない半身性身体失認(重度)

自分の半身に無関心となり、行動上半身が存在しないように振る舞う状態。(自分の手を認識できない)不自然な肢位になっていても直そうとしない。麻痺ではなく、あっても軽度。

NIHSS診察で気がつく症状

5-6上下肢麻痺:半側の上下肢が自分のものだと認識できないことで気がつきます。

認識できない上肢を患者の目の前に持ってきて、「誰の手ですか?」と質問しても自分の上肢だと認識できない。「あなたの手です」、「他の人の手です」と答える。 >2点

他のNIHSS項目

1a 意識, 1b 質問, 1c 従命, 2 眼球運動, 3 視野 : (1), (2)

4 顔面麻痺, 5–6 上下肢麻痺, 7 失調, 8 感覚障害, 9 失語

10 構音障害, 11 注意障害 :(1), (2), (3), (4)

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