「打つ」と「書く」は別物
先月の誕生日、友人から手紙をもらったので、その返事を書いた。久しぶりに手紙と対峙したら、びっくりした。普段、仕事で四六時中、文字を書いているのに、それとはまったく違うことをやっているように思えた。
便箋を滲ませるインク、そこに込めた思いの丈は、ペン先を離れた瞬間、自分から切り離されていくようで、それはフィルムカメラのシャッターを恐るおそる切る刹那の感覚と似ていた。一度書いたら、直せない。消しゴムで消すことはできても、書く前と同じ状態には戻らない。緊張感が、脳の普段使っていない部分を、焚き付ける。