父の江戸っ子気質の遺伝を呪う。瞬間的に惹かれたという理由だけで、近所のうなぎ屋に入った。財布に余裕のある月初に気が緩む、悪い癖だ。
その店はいかにも老舗といった風体で、飾り気も商売っ気もなく、それでも続いているなら、地元に愛されている良店なのかもしれないと、一抹の期待を抱いていた。店先の大きく開いたガラス窓からは、大将と思しき人が、炭火の前に佇んでいるのが見えていた。