53: 『パクチー通信』が終わるとき

創刊から１周年の記念すべきこの53号を、最終号にすると決めていた。私たちが最終号のネタとして選んだのは、共同編集長である私とさやかと、『パクチー通信』誕生のきっかけを作った師匠の３人による座談会だ。都内のレストランに集まり、パクチー料理をほおばりながら…

37: 【パク食考】魚片粥

『美味しんぼ』のファンだ。 『美味しんぼ』は、新聞社に務めるぐうたら社員の山岡と同僚の栗田さんが、担当する「究極のメニュー」づくりに奔走する過程で、さまざまな背景を持った人と出会い、「食」の持つ力、「食」の世界の広がりを学んでいく話だ。

私は『美味しんぼ』にこれまで２度救われた。１度目は、フィンランドに住んでいた頃、長く暗く寒い冬の間、日本の食が恋しくてたまらなくなった時のことだ。フィンランドにも美味しい料理はいろいろあるが、家庭料理も外食も日本のほうが圧倒的に選択肢が多い。アニメ版の『美味しんぼ』を観て、日本の食の幅広さと奥深さのストーリーを、視覚的…

39: 【パク食考】ネパール風コリアンダーチキンカレー

我が家では、よく友人を招いて食卓を囲む。そういう時、私は客人と会話し、ユウタロウ（夫）がせっせと料理を作りふるまう。この様子を見て驚く人も多いのだが、何年も経てこのフォーメーションが一番互いにとって心地よく、客人をもてなしやすいという結論に至った。ユウタロウは、よく使われることばで言えば「女子力」が高い。料理をしたり、洗濯をしてアイロンをかけたり、裁縫や編み物をしたりすることが大好きだ。私も料理は嫌いではないし、洗濯や掃除は（おそらく）人並み程度にはする（裁縫や編み物は、一切しない…）が、近くに私より生き生きと楽しそうにやってくれる人がいるので、任せがちに…

36: うっとりパクチー

あたらしい季節がはじまる。この時期は、土の中で芽吹きを待つ生命のようにそわそわしてしまう。気温が上がり、冬のあいだにピンと張り詰めていた空気が解凍したような感じがする。溶け出した空気の匂いは色濃くて、弾けるようなエネルギーに満ちている。私たちのパクチーも、春到来の予感にわくわくしているだろうか。先々週、大橋家に差し入れたパクチーは、カナさんが知らないあいだにユウタロウさんが全部食べてしまったらしい。パクチーたちはどんな料理になったのだろう。おいしく食べてもらえたなら、とてもうれしい。

52: パクチーなんて、嫌い

いつものように、ちょっとした思いつきだった。ちょうど1年ほどまえ、コリアンダーの種を蒔いた。…

48: パクチーとタネ

そろそろ梅雨の予感がする。暑かった５月の日々に比べ気温が下がり、代わりに湿度は急上昇だ。本日６月８日の午前中は、しとしと降る雨と曇り空を眺めながら、「カナさんは無事に到着したかしら。」などと考えていた。カナさんがフィンランドに旅立っている今、少しのあいだではあるもののわたしに…

31: 給食とパクチー

火曜日の深夜、あいこさんからのメッセージで目を覚ました。「今、ラジオ聴いてたらパクチーニュースが！NHKラジオ深夜便より。日本有数のパクチーの生産地・岡山市北区ではじめて給食にパクチーが出るらしいよ」あいこさんは、パクチー関係のおもしろい情報を見つけると、すぐに教えてくれる。ありがたいし、とても嬉しい。

『週刊パクチー通信』を続けていて、あらためて実感していることがある。それは、ずいぶん前に金子郁容先生が著書『ボランティア―もうひとつの情報社会』の中で、「ヴァルネラビリティ」ということばで説明していたことだ。うろ覚えなので、正しいかどうかはわからないが、次の…

49:パクチーで朝食を

梅雨入りを告げたのは先週のことだ。たしかに以前よりは雨の日が増えたが、今日の湘南は昼前から澄んだ青空が広がっている。かなさんのいるフィンランドの天気はどうだろう。

38: あっちこっちパクチー

大学３年生の春休みが、もう終わる。のんきにしていたら、授業履修エントリーの締め切りが迫っていることに気づき、あわてて新学期の時間割を考えてみる。この作業も、(順当にいけば)今年度の春と秋、あと２回で終わりだ。私はすっかりあたたかくなった陽射しを受けながら、いろいろなはじまりやおわりを意識する。いままで経験してきたそれらも、これから訪れるそれらも。もたもたと思考を巡らす私を尻目に、パクチーはますますイキイキと茂っている。なんだか香りも強くなったみたいだ、と水をやりながら思う。その生命力におどろくと同時に、うらやましくもなった。

41: パクチーから「伝統」を考える

今週、パクチーにまつわるふたつの記事を読んだ。どちらも「伝統」について考えさせられる内容だった。ひとつめは、あるタイ料理店の店主が、店先に「パクチー料理ありません」という貼り紙を出したことが話題になっているという内容の記事だ。貼り紙を出した背景を、店主が以下のように語っていた。

「日本では近ごろ『パクチー料理』が出てきていますが、それは『創作料理』であって『タイ料理』ではありません。当店はタイ料理の店なので、そもそも扱っていないパクチー料理を求められても困るのです」…