彼女といるとき

その日は朝から晴れていて、夕方突然降り出した雨が夏の始まりを感じさせるような日だった。どうせすぐやむだろうと思い、傘を忘れた友人に自分の傘をあげてしまった私は、夜になって強さを増したその雨を、待ち合わせの場所の庇の下で凌いでいた。

こんな雨なら、さっさと店の中に入って待ってればいい。他の店なら、他の人と待ち合わせているならそうしたかもしれない。それでも私は遅れてやってくる彼女を待っていた。

小さな王国

「おかえり」

毎日、玄関までの階段を軽々トントンと駆けのぼる少年がいた。あれから４年。いま我が家を目の前にして、先のひろがる景色に緊張する。ゆっくりと玄関までのぼりつめ、恐る恐るドアノブを握りしめた右手を勢いよくおろした。重いドアが開かれ、廊下から木のツンとした、なま温かい空気に包みこまれる。石畳に並べられた大きい靴やほっそりとした靴、背の高い木でできた靴箱、小さい頃の写真。慣れ親しんだ、変わらない場所へと戻ってきた。家のなかへと吸い込まれていくように、一歩一歩すすみ出した。

元気で明るい

かんかん照りの日。きのうまでの雨がうそのよう。わたしは昔からいわゆる晴れ女で、出かける日は晴れることが多い。

晴れた日は出かけたくなる。ところまではいいのだが、いざ外に出ると日差しが苦手なわたしはすぐ、日陰を探す。芝生の木陰とか、パラソルがついたベンチとか。風が気持ちよくって、火照ったからだが落ち着く。そうやって休み休み、晴れた日を過ごすのが好きだ。

いつもよりすこしだけ注意深く見てみると、日陰はまちにたくさんある。そしてそこにひとは集まる。カラッとよく晴れた日は、特にそうだ。